“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第227回
80年熟成酒を飲む

先日日本酒の80年古酒を飲む機会があった。
長期熟成酒研究会の創立20周年記念事業のイベントで、
和歌山の蔵元で見つかった
80年前に醸造された熟成酒が振舞われた。
200名の参加者に均等配分された80年熟成酒は、
ほんのわずかの量ではあったが、
その酒質を楽しむには十分であった。
色は綺麗な琥珀色。
老(ひ)ねた香りは全然感じずに、綺麗に熟成している。
醤油から辛味をとったような独特の味わいが芯になって、
しゃきっとした構造を感じる。
最初は閉じていた味が、空気に触れてだんだんと開いてきて、
30分も経った頃には、とてもいいバランスになっていた。

長期熟成酒研究会では、3年以上熟成した日本酒を
「長期熟成酒」と定義して、
多くの蔵元が集まって、日本酒の熟成を試みて、
消費者へ発信をしている。
同じ会場で、全国の蔵元がブースを置いて、
それぞれの長期熟成酒を試飲させてくれる。
いずれも旨かったが、
特に印象的だったのは、達磨正宗の昭和48年醸造の熟成酒。
醤油のように真っ黒な液体を飲むと、
芳醇な熟成味がひろがる。
濃いけれど綺麗。
しっかりとしたストラクチャーが余分な味を排除している。

長期熟成酒研究会のこのようなイベントは
一般人でも参加可能で、毎年の楽しみになっている。
熟成酒、あるいは、古酒というと
日本酒の特殊な分野と思われがちで、
敬遠する酒飲みも多いが、
熟成は上槽して新酒として提供された時点から始まっている
連続なものであり、
秋ごろの味のりしてくる「秋あがり」、
そして、1年、2年と熟成が深まってくる延長にある。
いい造りでないと、熟成しても旨くはならない。

長期熟成酒研究会は熟成酒の探求を長年行ってきて、
熟成酒の訴求に貢献してきた。
しかし、熟成酒、古酒は特殊という考えがまだ消費者に根強い。
日本酒は熟成できてこそ本物という原理を
消費者へもっと理解してもらう広報活動が必要と思われる。


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2005年7月5日(火)

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