“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第179回
若竹煮

この季節は、筍と若布を一緒に炊いた若竹煮が、
どこの居酒屋にもお品書きに加わる。
筍は春の旬であるけれど、
鹿児島のものがまず出回り、だんだんと北上していく。
冬を越した筍は寒い季節に糖度をあげて
凍らないように努力している。
それで、初春の筍は甘みがある。

若布もいまが旬だ。
生の天然ものが出回る時季である。
このところ、毎日のように若竹煮を食べる機会がある。
先日は服部栄養学園の中山先生の
若竹煮の技法を見せてもらった。

昆布と鰹の出汁で筍をまず煮るのだが、
途中で鰹をサラシで包んで鍋に入れて、追い鰹とする。
その上にさらに昆布を重ねて煮ていく。
そのときは、あまりいい昆布がなかったので、
まずは若布で出汁をとっていた。

実はこの若布は、
鱸のこだわりの漁師の村公一君の養殖した
若布を持参したものだった。
天然の若布も村君にお願いしていたのだが、
タイミングがあわず当日は天然若布は送れないということで、
養殖して乾燥した若布を用いた。
この若布は村君がこだわって、
普通のものよりも株と株の間の距離を大きくとって、
海水が株の全体によく当たるように配慮している。

そして、乾燥方法がまた、
昔の灰干しに匹敵する手法をとっているという。
鳴門の若布の灰干しは有名だが、
最近は、灰を作るときにダイオキシンが発生するということで、
灰の確保は難しい。
そこで、村君は活性炭を用いて、
昔の灰干しと同じような乾燥ができる手法を開発したそうだ。
この村君の若布と、いい筍を炊いたものは
もう、なんともいえない旨さだ。
筍のつるんとした食感に、若布のぷりぷり感が重なり、
さらに、筍と若布の甘さが相乗しあって、
とても美味しい煮物になる。
まだ、土のなかにある筍を掘って、
間髪いれずに村君の若布と炊く。
そんなことができる機会はなかなか訪れないと思うが、
自分でできるだけ機会を作ってみたい。


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2005年4月21日(木)

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