第162回
春しか飲めないブラディマリー
ブラディマリーといえば、
ウォツカとトマトジュースのカクテルだが、
春の時季しか出さないショットバーがある。
Bar ODINという店で、
店主の菊地貴彦さんは自ら世界の蒸留所、醸造所に赴き、
知名度は低くても実質的に美味しい酒をそろえている。
それだけでなく、カクテルで用いるフルーツ、
つまみでだす食材も、菊地さんが生産者を訪問して、
無農薬など安全なものを取り寄せているこだわりようだ。
ブラディマリーで用いるトマトジュースは、
カクテルを造るときに
緑健トマトをフードプロセッサーで絞ったもの。
今年からは掛川の石山さんが、
自然農法として有名な永田農法で栽培した
最高のトマトを用いている。
そんなブラディマリーが美味しくないわけがない。
ある日のODIN銀座店は、
まだ時間も早かったせいか、我々二人だけしか客はいなかった。
ついて、早速ブラディマリーを注文。
淡いピンク色が美しい。
口に含むとトマトの優しい酸味と甘みがさわやかで、
喉を通るときに邪魔するものは何もない。
美味しいジュースを飲んでいるという感覚で、
ウォツカの存在感を全く感じない。
そう、トマトがあくまで主体なのだ。
通常のブラディマリーを飲みなれた人にとっては
物足りないと感じるかも知れない。
タバスコ、胡椒など入れる必要は全くない。
突合せとして注文したスモークタンもとてもいい味だった。
続いて、ブラディブルを注文。
これは、ブルショットというカクテルと
ブラディマリーを合成した名前だ。
ブルショットとは、ウォツカをコンソメで割ったもの。
これは、アメリカの禁酒時代に、
酒ではなく、スープという言い訳で
アルコールを飲むために開発されたものだ。
ブラディブルはウォツカ、トマト、コンソメの組み合わせ。
コンソメの落ち着いた味わいがトマトに溶け込んでいて、
しっかりとした味わいだ。
ついでに、この季節の果物を全て飲もうということになり、
下田で栽培されているグレープフルーツを用いたソルティドッグ。
どういうわけか、甘夏に似た味わいで
酸味に加えて甘みがアクセントになっている。
最後が路地ものの苺をブランディに合わせたカクテル。
苺の甘み、酸味にブランディの葡萄の果実味が加わり、
どしっとした、こくのあるカクテルだった。
Bar ODINは恵比寿が本店、銀座が支店だが、
どちらも美味しい酒が飲める。
銀座での最後の仕上げは、
バーヒース、シェリーミュージアム、Bar ODIN
と選択肢が色々あって、いつも迷ってしまう。
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