第123回
スミ烏賊の旨みはアオリ烏賊以上
烏賊の美味しさは、甘みと食感のハーモニーにあり、
他の魚介類では味わえない。
その烏賊にも色々種類がある。
スルメ烏賊、ヤリ烏賊、アカ烏賊などなど。
それらのうちで、やはり烏賊の大様となると、
夏はアオリ烏賊、冬はスミ烏賊だ。
アオリ烏賊とスミ烏賊は、
鮨、天麩羅という江戸前料理には欠かせないもの。
何故、この両者が鮨、天麩羅で使われるかというと、
旨みはもちろんのこと、
ともにコウイカの種類なので身が厚くて、
もちっとした食感が鮨にも天麩羅にもとても合うからだ。
しかし、スミ烏賊とアオリ烏賊とどちらが上かということは、
様々な議論がある。
食感はアオリ烏賊のほうが上だ。
図体が大きい分だけ身も厚く、
しこしこした食感はたまらない。
しかし、そのしこしこ感は握り鮨に合わないと
スミ烏賊しか使わない鮨屋もあるので、
色々な考えがあるようだ。
味わいの深みから行くとスミ烏賊が鼻一つ前を行く。
しかし、食感などは包丁目の工夫などで調整できるし、
味わいも熟成させ方でコントロールできる。
スミ烏賊もアオリ烏賊も二日くらい置くと甘みがさらに増し、
表面にヌメリがでてくる。
この状態で酢でさっと洗うと表面は新鮮なぷりぷり状態、
中はもちもちの旨み。
これを刺身で食べてもいいが、
周りだけちょっと炙るともうたまらない味わいになる。
スミ烏賊はアオリ烏賊に比べればとても小さいので、
十名、二十名程度の宴会では数ハイ仕入れる必要がある。
その名の通り、
墨を吐きながら中卸の水槽に入れられているので、
新鮮そうなものを選ぶ。
スミ烏賊とアオリ烏賊の微妙な味、食感の違いを、
両者の重なる春や秋の時季に楽しむのも面白い。
どちらが美味しいかというよりも、その個性の違いがよく分かる。
刺身だけでなくて、焼き物、炒め物、天麩羅など、
色々な調理をして比較してみるのも楽しいので、
ぜひお試しいただきたい。
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