第122回
蛤
冬になると鮨屋から鮑が消えるけれど、
その代わりに蛤が美味しくなってくる。
蛤は雛祭りに使われるが、その頃が一番の旬だからである。
蛤は三月いっぱいくらいまでが一番美味しい時季だ。
蛤はカルシウム、マグネシウム、
亜鉛、グルタミン酸などが多く含まれていて、
疲れたときに食べると元気がでてくる食べ物でもある。
蛤もピンからキリまであるが、
やはり国内産の天然もの、すなわち地蛤が旨い。
街中のスーパーなどでみかける蛤はほとんど中国産だ。
桑名の焼き蛤なども、最近はほとんど中国産が多いようだ。
地蛤は出汁をとるとその味の深みが歴然と違う。
那珂湊の市場では
茨城でとれる巨大な地蛤を結構安い値段で売っている。
これが、すごく旨い。
鮨屋の煮蛤は旨いが、
家庭では酒蒸が手軽でいい酒肴になる。
鍋に蛤を入れて、酒と醤油を注いで
蓋を閉めて火にかければできあがる。
バター風味を出すのも旨いし、香り付けは色々考えられる。
天然のいい蛤が入手できたときには、
やはり焼き蛤か、潮汁が一番自然な味わいを楽しめる。
殻ごと焼いて、口を開けたら醤油をちょびっとたらし、
酢橘、レモンなどの柑橘類を絞る。
酒を僅かにかけても旨い。
貝殻のなかにたまった汁をこぼさないようにするには、
結構努力が必要だ。
いずれにしても、焼きすぎは身が固くなるので、
半生くらいで食べたほうが旨い。
潮汁は昆布で出汁をとったなかに蛤を入れて、
口を開いたら一旦取り出して、
汁のなかに旨みがあまり溶けださないようにしておく。
いい蛤なら調味料は不要で、海の塩気だけで十分だ。
酒なども入れる必要はない。
蛤の潮汁は、まさに海の香りがする。
これほど香りが強烈な割には上品な汁の具材も珍しい。
これから、しばらく
蛤を色々と料理して楽しめるいい季節となった。
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