“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第118回
神亀の熟成酒

日本酒の本を執筆している関係で、神亀酒造に取材にでかけた。
小河原専務とは旧知の間柄で、
酒造りの忙しい時季であったにもかかわらず、
丁寧に対応していただいた。

蓮田の神亀酒造を最初に訪問したのは平成6年のことだった。
当時、槽口純米吟醸シリーズとして
2年目に出したばかりの「空」と「海」を蔵でご馳走になった。
「空」と「海」の違いは酵母の違いだが、
この酒はとても美味しかった。
専務が自ら九州から送ってきたブンタンを剥いて、
柑橘系がこの酒には合うと言って飲ましてくれた。
あまりに旨くて、
飲みすぎて途中で寝込んでしまった覚えがある。

槽口純米吟醸酒は、平成5年に出した「遊」を皮切りにして、
その年ごとに洒落た名前ででている。
平成7年「花」、
8年「草」「風」、
9年「天」「笑」、
10年「月」「星」「毎日楽しいな」、
11年「希」「雨」「虹」、
12年「桜」「旅」「今日はのんびりしたいな」、
13年「酒」「酔」「心」「萌」
などなど。
小川原専務は命名の名人だ。

これらのランナップを全て揃えて、
垂直テイスティングを平成14年の春にやったことがある。
特に旨かったのが、「空」「海」の燗だった。
神田「新八」の二階で小川原専務も呼んで行ったが、
このときには、二階の厨房を貸してくれて
鴨の料理などを私も造った。

そのときに1升瓶の底に少しあまっていた「草」を帰りにもらい、
大学に置いてあった。
それを最近、学生と飲んでみた。
これが、凄い。
その前には専務からもらった
「ひこ孫」の10年古酒を燗にして、感動していたが、
「草」はその上をさらに超えて心に響くようだった。
開栓して2年たっていたが、
全く崩れていないのにはびっくりする。

よく神亀を若いうちに、それも、冷やして飲んで
その真髄を理解できない日本酒マニアがいるようだが、
熟成して、それを燗にしないのはもったいないことだ。
うちの学生たちも、
「草」の呑み残し熟成モノをすごいと感激し、
燗にして感動を覚え、
燗冷ましにして天にも昇る目つきをしていた。
今では、神亀の槽口純米吟醸酒の古いものはあまり見られないが、
「空」「海」など置いてあれば、すぐに押さえるべき酒だ。


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