第117回
紹興酒と日本酒の造りの違い
日本酒と紹興酒はともに米を原料とする醸造酒だ。
その醸造方法の違いは何だろう?
原料とする米が日本酒と紹興酒ではまず違う。
紹興酒では粘りのあるもち米を使う。
しかし、紹興酒と日本酒の醸造方法の最大の違いは麹造りだ。
麹の種類がまず違う。
日本酒ではアスペルギルス・オリゼー(黄麹カビ)を用いるが、
紹興酒はリゾーブスカビ(クモノスカビ)を主に用いる。
黄麹カビには糖化力しかなくて、アルコール化はできないが、
紹興酒のクモノスカビは糖化とアルコール化の
両方の能力を持っている。
麹造りも随分違う。
日本酒ではバラ麹といって、
麹が米の一粒一粒のなかに菌糸を伸ばしていって、
米がバラバラの状態で麹造りを短期間にするが、
紹興酒では一塊の餅状で麹造りをするので、餅麹と呼ぶ。
しかも、米ではなく麦を使う。
紹興酒では麦を粉砕し、水をまぜて餅状にして、
クモノスカビを撒き、それを冷暗所において
20日から1ヶ月放置しておく。
そこには純粋なクモノスカビだけではなく、
空気中の様々な微生物もついて、複雑な味になる。
日本酒では、麹造りは繊細な作業で二日間で終わり、
そこには純粋に黄麹しか入らない。
紹興酒は、いかにも大陸的な
大胆で細かいところを気にしない酒造りだ。
酒を逞しく育てる。
それで、長期熟成に向いている。
女の子が生まれたら、出来立ての紹興酒を甕に入れて、
土のなかに埋めて、その子が結婚するときに、
掘り出して持たせる、という風習ともマッチしている。
紹興酒も当たり外れは大きいが、
いい紹興酒を長期熟成したものは、とても旨い。
最近は中華料理屋でワインを出すところも多いが、
やはり中華料理には紹興酒が合うように感じる。
ナッツの焦げたような熟成香と酸味によって、
中華の脂が旨みに変わる。
いい紹興酒は砂糖などはもちろん入れずに、
ロックでもなく、常温か燗をして飲むのが好きだ。
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