“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第91回
初冬の自宅での宴会

卒業研究の中間発表会が行われたあとに、
研究室の学生を自宅に招待して宴会を開いた。

今回はアンコウ鍋にするつもりで、
小樽の三角市場のなじみの店に
仕入れをお願いしてあった。
しかし、小樽の海があれていて
漁船がなかなか出港できないという連絡。
茨城のアンコウもこくがあって旨いが、
北海道のアンコウは、雑味が少なく上品だ。
ぎりぎり前日までまったが
結局船がでないとのことで、
急遽、タラバ蟹の鍋に切り替えることにした。

小樽の鮨屋で食べたカニ汁の味が印象的だったので、
今回は酒粕を使った鍋にすることにした。
人数を小樽の三角市場の懇意の店に伝えて、
タラバとシマソイという魚、
それに、前回の小樽訪問の土産で気に入った
烏賊の沖漬けを送ってもらう。

届いた活タラバは1.8kgという少し小さめのオスが2匹。
蟹はまだ活きていて足や髭を動かしていた。
鋏で足を切り、殻を剥いてさばく。
今回は学生にやりかたを教えて捌いてもらったが、
部屋中にいい香りが立ち込める。

出汁は昆布だしの水を沸かせて、
諏訪泉純米酒の生の酒粕を溶かす。
それに、醤油で薄味に味付けをして、蟹の身をまず煮る。
蟹が煮えてきたところで、
白菜、人参、えのき、椎茸、春菊を入れてさらに煮る。
最後に豆腐と葛きりを入れる。
酒粕の香りが蟹によくあい、汁がとても旨い。
それが白菜などの具にもしみこんで、
美味しさに身体も心も暖まる。

あわせた酒は宗玄の山田錦を使った純米無濾過生原酒。
宗玄は能登の先端の珠洲市の酒ということもあって、
魚介類によく合う。
熱々のタラバを手で殻をはずしながら食べ、
また、宗玄を飲む。

最後に鍋を汁だけにして「おじや」を作ったが、
これがまたとても美味。
上品なタラバの味がご飯にしみている。
北海道の海の幸が簡単に取り寄せられるのは幸せだ。


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