“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第66回
タラバは焼くのが最高

11月はタラバ蟹の美味しい時期である。
しかも、年末から正月より安く入手できる。
タラバ蟹は実は蟹ではなく、ヤドカリの仲間だ。
足の数を数えてみれば6本しかない。
蟹であったなら、もう2本美味しい思いができるだが、
ないものねだりをしても、しょうがない。

タラバの食べ方は色々ある。
一般的なのは茹でることだろう。
新鮮な活タラバなら生も旨いし、蒸すのも味が抜けなくていい。
生の新鮮な足をしゃぶしゃぶで食べるのもとても美味だ。
しかし、なんといっても、一押しの食べ方は焼くことだ。

タラバの足をできれば炭火で焼いて、
あつあつの状態でほお張れば、
口のなかには蟹の旨みが溢れてきて、至福のときをすごせる。
まさに無言で孤独な幸せに浸れるときだ。
炭火でなくてガスを使ってももちろんよい。
焼くことが一番旨みたっぷりのエキスが抜けない。
ただし、焼きすぎないほうが旨い。
火を通しすぎると蟹の肉が殻に付着して、
しかも肉がパサパサ状態になり、食感もよくなくなる。

タラバは足だけでも売っているが、
食べる人数がある程度確保できるなら、
一匹を調達して捌くことがお勧めだ。
そのほうが、身が新鮮だからだ。
捌き方はそれほど難しくは無い。
足は出刃包丁で簡単に切れるが、料理用の鋏を使ってもいい。
足は食べやすいように、
殻を細長い穴を足の長さ方向に開けておいて、
身が見えるようにしておく。
関節の部分が取り出しにくいが、
その蟹の足の先端の尖った爪を利用すると、簡単に取り出せる。

で、どこが旨いかというと、ハサミが一番なので、
人数が多いときには、この部位を確保しておこう。
一番よく発達した筋肉なので、
身がしまっていて、味が凝縮している。
たまには豪華に新鮮な活タラバを調達して、焼いて愉しみたい。


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