“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第41回
本場のムール貝

今年5回目の欧州出張は美味しかった。
今回はブラッセル、パリを訪問。
現地技術者との意見交換が表向きの目的だが、
密かな愉しみが実はあった。
まず、ブラッセルではこのはしりの時季のムール貝を食べること。
フランスでもムール貝は料理するが、ベルギーほど豪快ではない。
いわんや、日本のベルギービール専門店では
小さい器で僅かな量がでてくることが多い。
ベルギーではバケツにいっぱい入ってでてくる。

到着した翌日は、欧州委員会のプロジェクトの代表をしている
旧知のドイツ人技術者を訪問し、
昼飯を近くのレストランでともにした。
VINOSという名のレストランで、
海産物が得意だということだ。
看板にもフルーツドメール(海の幸)と書いてある。

もちろん、前菜はムール貝を注文。
定番の白ワイン蒸し。
店によって色々なバリエーションがある。
こちらの店のは単純な味つけで、
それが素材の美味しさを引き出していた。
独特のこくと香り、
それに、スープに溢れ出たエキスを貝殻を用いてすくって呑めば、
なんともいえない奥深い味わいがする。
合わせたワインはサンセール。
爽やかな青い香りが、まあまあムール貝にあっていた。

ところがである。
メインに何を食べたかが思い出せない。
まだ、2週間くらいしか経っていないはずなのだが。
それだけムール貝の印象が濃かった。

この日の夜もムール貝を食べた。
お目当てのビアサーカスというビアカフェが満席だったので、
グランプラスの近くのレストランの密集地帯にある
シェ・レオンに行く。
昨年も来て気に入った大衆店。
同行した先生は私の度重なるムール貝の注文に唖然としている。
濃い目の味付けがベルギービールによく合う。

日本ではムール貝は高級食品の部類だ。
本場のように気楽に提供する店ができてほしい。


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