| 第33回神楽坂「三田」で出合った鴨
 以前、神楽坂に「三田」という素晴らしい割烹があった。もともと、赤城山のブリーデン牧場の
 自然育成豚の内臓の炭火焼を提供していたが、
 これが、とても美味。
 この店には十数年かよって、豚の内臓の旨さを嫌ほど知った。
 女将さんの実家であった古い家屋の一軒家は、
 隠れ家的な雰囲気もあって、
 色々な知り合いを招待するにも随分重宝したものだ。
 この店が豚と一緒に提供していたのがバルバリー鴨で、あるときからはご主人が豚を捌く体力がなくなったと、
 豚をやめて鴨専門料理店として再出発をした。
 その鴨が「西崎ファーム」のバルバリー鴨である。
 数年前にご主人の遠山さんは脳梗塞になって、
 「三田」は閉めることになったが、
 このとき提供していたバルバリー鴨の
 鴨すき、鴨しゃぶ、コンフィーは本当に美味だった。
 この西崎ファームの鴨は本当に美味しくて、個人的にも取り寄せるようになった。
 西崎ファームはつくば山麓にあり、
 バルバリー鴨を栗林の自然のなかで放し飼いにしている。
 農場の見学にも訪れたが、
 鴨が本当にのびのびと自然豊かな牧場のなかで飛び跳ねていた。
 餌は遺伝子組み換えではない穀物を厳選して配合している。
 自然に近い放し飼いにより、健康になり、
 病気にもなりにくいという。
 バルバリー鴨はフランス料理にはかかせない食材だが、西崎さんは脱サラをして、
 バルバリー鴨の育成を手がけるようになって20年、
 いまでは有名料理店から
 引き合いが多数くるようになっているようだ。
 バルバリー鴨の特徴は凝縮した旨みのある赤味と、
 少ないが上品で繊細な脂身である。
 西崎ファームでは、他に、合鴨、本鴨、軍鶏も育成していて、バルバリー種で物足りないときには、こちらをとればよい。
 鴨南蛮蕎麦には合鴨の脂が汁と蕎麦を結びつけて、
 とてもよいハーモニーになる。
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