第59回
精気神と心

精気神と五臓六腑は
互いに促進と影響の関係にありますが、
五臓六腑の間でも互いに協力して
一体となって精気神を整えるように働きます。
しかし五臓六腑のすべてが
同じレベルに働くわけではありません。

中医学では、
昔から古代の国家管理役に例えて
五臓六腑を考えてきました。
それは、心は「君主の官」、肺は「相傳の官」、
脾は「倉稟の官」、肝は「将軍の官」、
腎は「強作の官」であるというものです。
これは『黄帝内経』にも載っています。

今回は、五臓の中でも
君主とする心についてお話をしようと思います。

心が君主の官と呼ばれる理由は
神を司るからです。
即ち生命活動の主宰を務め、
各臓腑を順調に働かせて生理活動を協調し、
統帥する働きをしているのです。

神がうまく働けば
精と気の状態と働きも良くなります。
ですから、養生では神を整えることは重要であり、
神を整えることとは
即ち心を調整することなのです。

このことは中国の色々な伝統健康法には
心を調整する内容がほとんど入っていることからも
わかると思います。

以前、この連載の中でも
「三調」(調心、調息、調身)
紹介したことがあるのですが、
今回こうして再度、調心は三調の中でも
一番重要な内容であるとする考えをお話しました。

そして心のもう一つの働きとは、
血脈を司ることです。
中医学では、血というものは
飲食から生成された精、
気が相互に作用し合った結果できた水液状のものであり、
臓腑、皮毛、筋肉関節などの働きが必要とする
栄養物質であると考えます。

血脈とは血を包んで
全身を周流させる管道であり、
現在の血管の概念と近いものです。
この血脈を心が司るわけですが、
それは全身の血脈(血管)だけを管理するのではなく、
血が全身を巡るようにすることでもあるのです。
つまり、血の巡りが悪くなると
臓腑をはじめ様々な生理活動が出来なくなるということです。

以上のことから、
心が「君主の官」と呼ばれる理由とあわせて
調心(心を調整すること)が重要とされる理由も
わかっていただけたかと思います。


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