第32回
健康法としての太極導引
太極拳に対する皆さんの印象は、
第一に、ゆっくりとした動きにあるだろうと思います。
中国武術流派の中でも
練習時にゆっくり動くものは
太極拳しかありません。
この特徴的ともいえる
体をゆっくりと動かすことは、
本来は太極拳の格闘技を習得するための方法ですが、
運動という面からみれば、年齢を問わず、
どんな体質の人にも合うという利点にもなります。
だからこそ太極拳は
中国で練習する人が一番多い運動になったのです。
特に中高年及び体力の弱い人は
一般的に体力が落ちてきた、
もしくは落ちやすい状態にあるので、
スピードを必要とする運動はできなくなります。
その点、太極拳の動きはちょうど合っていると思います。
ゆっくりとした太極拳の動きは
心臓や肺に激しい刺激を与えませんが、
体力を全く必要としないわけではありません。
20〜30分の練習をすれば、
筋肉も痛くなり汗も出ます。
なぜなら、腕を動かしたり足を運んだり
胴体を捻ったりするような全身運動によって、
普段使わない筋肉も動かしているからです。
ですから練習し始めの時と
姿勢を低くして負荷をかけた時には筋肉痛になります。
また、練習によって全身の血行が良くなり、
体内の余分な熱を排出するために
汗が出ることもあります。
このように太極拳運動が
「気血を和らげ、体を柔らかくする」
という導引の趣旨をみごとに体現していることを、
おわかりいただけたことでしょう。
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