第85回
質屋を見れば経済感覚の違いがわかる その5
貧乏人がお金を借りる時は
自分のほうから担保を担いで持って行くが、
金持ちの質草は家や土地だから銀行のほうから見に来る。
その違いがあるだけのことである。
だから香港やシンガポールに行くと、
質屋は銀行と同じように、
大通りにデンと店を構えている。
なかにはインド人の番人が銃を持って立っていて
威風堂々としている。
「押」という看板がでているのがそれで、
「おさえる」という意味だから、
カタにとる物がなければ、貸してくれない。
カタに入れる物があるのだから、
カタに入れる物もない貧乏人に比べればウソとましなほうで、
威張ったものではないかと中国人は考える。
ではなぜ日本人は貧乏していることを
そんなに恥ずかしがるのだろうか。
それはお日様さえあがればメシの食える日本で、
今夜のコメにも困るようなことになるのは、
真面目に働かないからだと思われているからではあるまいか。
もう一つ考えられるのは、
日本の支配階級であったサムライたちは、
一般に経済知識に乏しく、いつも貧乏をしていた。
「武士は食わねど高楊枝」
という言葉からも想像できるように、
いつもひもじい思いをしていた。
それでも人の上に立つ以上、物乞いをしたり、
お金が欲しいと口に出しては言えない。
そういった気風が日本人全体の気風になって、
上から下まで
お金のことは一切口にしなくなったのではあるまいか。 |