第307回
知らなくても根付いている中国人にとっての「歴史」

江沢民氏は、
現在の日本ではむしろ
中国に反日を中心とした
愛国主義教育を根付かせたともされ、
あまりいいイメージはないかもしれません。
今回の一連の反日デモ及び騒動も、
この愛国主義教育が
多かれ少なかれ影響していることは
間違いありません。

私個人としても、
特に江氏に対して
好感を持っているわけではありません。
「この人は私の数十倍もお金を稼いでいる立派な人だ」
というもう何年も前にもなるたった一言が
頭にこべりついていたのでも
お分かりいただけるでしょう。

それはともかくとして、
江氏の上記のような言葉が、
前回指摘したように、
『春秋公羊伝』の
「権を行うに道有り。自らを貶損して以って権を行う
(政権を担当するものは、
 自分を貶めそこなうようにして
 権力を行使しなければならない)」
という言葉を意識していたでしょうか?

それを意識していたとすれば、
「この人は私の数十倍もお金を稼いでいる立派な人だ」
という言葉は、実は、
「私はこの人のように
 お金を稼いでいるわけではないが、
 お金を稼ぐ代わりに
 (もしかしたら損しているかもしれないが)、
 政権担当するものとして、
 しっかりと権力を行使している」
ということをピーアルしていたことになります。

これは考えすぎかもしれません。
江氏が『春秋公羊伝』の言葉を
知っていたかどうか不明です。
『論語』のように『公羊伝』は
メジャーな古典ではないので、
知らなかった可能性が高いといえるでしょう。

ただ、問題は、
実は知っていたかどうかではないのです。
われわれ日本人にとっても
『論語』などは身近な古典ですが、
中国の現代の人々は、
そうした古典は身近どころか、
知らず知らずのうちに
そうした古典の中で編まれた知識などを吸収し、
時には実践している可能性が考えられるのです。

実際、日本では故事成語として
「覚えさせられる」ことを、
現在の中国語においては当然のように
普段の会話で使われます。
外国人にとって、中級以上になれば、
中国語の学習は
故事成語との戦いともなってくるほどです。

以上が正しければ、
「中国人は歴史を大切にする」というのは
言葉そのままの意味ではなくなります。
「日本人だって、歴史を大切にする」とは
違う次元になります。
中国の人々にとって、
歴史は今も根付く知識であり、
意識するかしないか別として、
実践のための拠り所となっているといえます。

前々回でお話した日中間の
「歴史認識」に戻ってくるわけです。

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2005年4月28日(木)

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