第90回
我々が狙うべきマーケットはどこなのか?
お手伝いさんから紙とペンを受け取ると、
香港人の総経理は紙にグラフを書きながら私に質問してきました。
「荒木さん、北京のベーカリーチェーンで
儲かっているところはどこだと思いますか?」
「味多美はしっかりと利益を残しているんじゃないでしょうか。
後は、、、うーん」
と考える私に、強い口調で
「どこも大赤字ですよ。
シンガポールから来たベーカリーも、
韓国から来たベーカリーも大赤字の大赤字ですよ。
荒木さんも勉強していますね。
大手チェーンでは私営の味多美はうまくやっていますね。
他のライバルのほとんどは大赤字です。
国営企業の流れをくんでいるところは
基本的に高コストなので駄目です。
それでも無制限に銀行借入れができるようなものだから、
潰れはしませんけどね」
総経理は話をしながら、
2枚のグラフと1枚の表らしきものを書き上げました。
「なんで、味多美とうち以外は大赤字なのか。
それは外資系ベーカリーの家賃コストが
信じられないぐらい高いからです」
そう言って外資ベーカリーと自社を比べて書いた
コスト比率表を見せてくれました。
コスト比率表には、商品原価、人件費、家賃、
その他経費と書かれています。
その表で真っ先に目につくのは家賃です。
実に15%以上もの差が
外資系ベーカリーと香港人総経理の会社との間では
出ていたのです。
「この15%の差は営業努力で何とかなるものではありません。
あのような高級物件でチェーン展開をしている間は、
どうやっても黒字化は無理です。
まあ、大手企業の大資本の戦略ですから、
大赤字も計算の内かもかもしれませんがね!」
といって大声で笑いました。
続いて、2枚の簡単なグラフが私の前に出されました。
ひとつのグラフは中国の人口比率を表したグラフでした。
もうひとつのグラフは、
頭が尖がっていて底辺が大きい
ドラゴンクエストに出てくるスライムのような形をしており、
そのグラフの中に外資系ベーカリーや
中華系ベーカリーの名前を書き込み始めました。
途中で思い出したかのように
最後にQ's CAFEの名前も書き込みました。
このスライムの表はマーケットの規模を表したものでした。
外資系ベーカリーやQ's CAFEが書き込まれたのは
スライムの先の先の方でしたが、
味多美はスライムでいうと目の辺り、
香港人総経理のベーカリーは味多美のちょっと上の方でしたが
外資系ベーカリーよりは
味多美に近い場所に書き込まれていました。
その2枚のグラフを並べて
「ベーカリーで儲かるのはここです」
とグルグルと線で囲み始めました。
年代では20代から30代、
スライムのグラフではスライムの目の下から目の上辺りまで。
外資系ベーカリーやQ's CAFEが書き込まれた場所は
外れていました。
この後も、まだまだ会食は続きましたが、
その後の懇談の内容はまた機会を見て書きたいと思います。
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