新入生、荒木尊史さんのQさん経営学実践奮闘記

第88回
パン作りが嫌いなベーカリー?

お手伝いさんが2人に、子供が3人、
奥さんと本人の計7人が住んでも、
窮屈さを全く感じさせない程、広々としたマンションに
この香港人の総経理一家は暮らしています。

その暮らしぶりは、完全に洋風そのものであり、
お手伝いさん以外との会話はすべて英語が基本で、
私と一緒にきた中国人幹部の2人は
完全に雰囲気に飲まれ、落ち着かない様子でした。
まずは、この度のOEM供給の協業先であり、
この香港人総経理が経営するベーカリーで焼かれている
パンの試食から始まりました。

試食のパンを切りながら
「ベーカリーの管理は本当に大変です。
特に厨房や工場、製造サイドの管理が
私にとっては苦痛でしょうがありません」とこぼします。
続けて
「私はカナダの大学でMBAを取得しました。
専門はマーケティングです。
なので、店舗展開やWebやマスメディアを活用した広告戦略等は
得意で好きなのですが、
製造の管理は大の苦手でしかも大嫌いなんです」と言います。

この言葉には耳を疑いました。
中国で10傑作ケーキ屋に政府から認定された
ベーカリーの総経理から、
ビジネスの根幹でもある商品作りがそもそも嫌いである
という言葉を聞くとは思ってもいませんでした。

パンの試食が一通り終わると、
フランスパンをスライスして軽くトーストしたものに、
フォアグラのペーストをあわせたアラカルトが出てきました。
これは本当に美味しくて、
総経理の話を聞きながらも、
皆ひたすらこのフォアグラのカナッペに手を伸ばしていました。

私は「でも総経理、自社での商品開発は
ビジネスの要じゃありませんか?
それが嫌いでどうやってここまで成功できたのですか?」
と質問しました。

総経理はニッコリして答えました。
「私は商品開発や物作りが嫌いだとは言っていませんよ。
製造分野の『管理』が嫌いだ、苦手だと言ったんです。
荒木さんもわかるでしょ。
工場なんて数日も目を離せば
すぐに目も当てられないほど汚くなってしまうし、
シェフ同士の喧嘩も日常茶飯事。
店舗のオープンキッチンだと
直接お客様の目にもふれてしまうので、
ちょっとした不衛生な動作が許せなくて、
私も怒鳴りっぱなしになってしまいます。
シェフも田舎から来た人が多いから、
怒られていることに納得できずに歯向かってくる。
まさに最悪です。
私もホトホト疲れ果ててしまうし、
第一、貴重な私の時間の多くを
この工場の管理に費やさなければなりません。
この問題を何とかしなければならないと考えていた時に、
Q's CAFEのパンとケーキに出会ったのです」
と言われました。


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2007年9月18日(火)

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