|  第86回月餅で1年分の利益!
 ご存知の方も多いかと思いますが、中国の中秋節には“月餅”を大切な方へ送る習慣があります。
 日本でのお歳暮に近い感覚なのですが、
 違いは贈り物が基本的には“月餅”だけしかないことです。
 “月餅”は地域によってことなりますが、中華菓子のひとつで
 ちょっと硬い饅頭と言った方がわかりやすいかもしれません。
 豚のラードをたっぷりと練りこんだ餡子で
 卵の黄身だけを塩漬けにしたものを包み、
 それを小麦で作った皮で包んで焼き上げるのですが、
 正直、あまり美味しいものではありません。
 しかし、中国の人々にとって
 中秋節の“月餅”は非常に大切なものです。
 今年は9月25日がこの中秋節にあたるのですが、
 すでに月餅商戦真っ盛りといった状況です。
 一体どれだけの月餅が売り買いされるのかはわかりませんが、私たちの想像をはるかに超えた経済規模であることは
 まず間違いありません。
 なぜなら、冗談ではなく
 多くの中華菓子屋やパン屋、ケーキ屋が
 この月餅の販売で1年の利益を作り上げるからです。
 私も何度となく、この業界の経営者からは
 “いかに月餅で稼ぐか”を耳にタコができるほど聞いてきました。
 ある北京の有名ベーカリーチェーンの経営者は「パンは来年の月餅のお客を
 確保するためにやっているのであって、
 うちを含め、月餅を販売する月以外は大赤字だよ。
 それを月餅の販売で一気に取り戻して、
 なおかつ利益を残すんだ」
 と私に言いました。
 確かに月餅の小売価格は異常に高く、
 政府もあれこれと、こと月餅の販売に関しては
 他の商品とは比べ物にならないほど首を突っ込んできます。
 面子を重要視する中国では、そもそも安い値付けの月餅はあまり売れず、
 かえって滅茶苦茶な値付けをした5星ホテルの月餅や
 高級レストランの月餅が飛ぶように売れたりするのです。
 それをおもいきり実践している工場を訪れたことがあります。
 その食品会社は高級ホテルや高級レストランの月餅を
 OEM生産している会社で、
 北京のホテル月餅市場の15%をおさえている
 業界大手の月餅専用食品会社です。
 この会社、驚くことに年間の工場家賃やら、スタッフの人件費やら、必要経費のすべてを
 この約3ヵ月間の月餅商戦だけで捻出して、
 なおかつしっかりと利益を確保しているのです。
 「いい仕事だよ、年に半分以上は休みだからね!」
 と月餅会社の社長は笑っていました。
 いや、本当に羨ましい限りです、、、。 |