|  第70回うちの強みは物件力
 今回もコラム3回に渡ってしまいますが、味多美の話の続きです。
 北京のパン・ケーキ業界の中で、
 絵に書いたような成功を収めている味多美ですが、
 やはり努力も並大抵ではありません。
 商品開発に関しては、
 社長からも聞いていましたが、
 3ヶ月に一回は日本や韓国、台湾にいって
 最新のトレンドを仕入れるようです。
 もちろん、クーラーボックスを持参して
 サンプルは北京まで持ち帰ります。
 工場長は“成分分析機を使えば、ほぼ80%までは近い味のものができる”
 と言います。
 “先月は大阪の○○百貨店のデパ地下で売っていた、
 ○○が面白かった”
 など
 私の予想を超えたペースで日本へも出張しているようでした。
 また、1回50万円ほどで日本や韓国、
 フランス人シェフからの技術指導を定期的に受けており、
 新製品開発への投資はかなりの額にのぼります。
 やはり工場長も社長と同じく、
 ポイントはいかに中国人にウケる味やデザインに改良できるかが、
 成功の鍵を握るといいます。
 確かに味多美の商品は走り過ぎていないのです。例えばチーズケーキ。
 我々日本人からすると
 “中華系のパン・ケーキ屋さんの中では美味しい方”
 という評価になります。
 しかし、現地の中国人スタッフなどの話を聞くと、
 チーズも臭くなくて滅茶苦茶美味しいという評価になります。
 まさに味多美の商品開発は
 マーケットを見据えた商品開発なのです。
 そんな話しを1時間ぐらいしたころ、工場長が突然私たちに
 “うちの一番の強みはなんだかわかりますか?”
 と尋ねてきました。
 考える間もなく、彼は
 “それはね、うちの物件力です”
 と自信に満ちた笑顔で答えてくれました。
 この言葉にはびっくりしました。
 詳しいことは尋ねても教えてくれませんでしたが、
 恐らく我々ではとても借りれない
 安い値段で借りる方法をあみ出したか、
 はたまた自社物件として運用することなのか
 “キモ”は未だにわからずじまいです。
 しかし、商品や工場設備だけでなく、物件開発にも独自の信念とノウハウがあるこの味多美、
 ただものではない予感です。
 株式の上場を考えているのか質問しましたが、
 即答で
 “今のところは全くない、なぜなら
 そんなにたくさんの資金を必要とするビジネスじゃないから”
 と言われました。
 自分たちがどのような方向に進むべきか、
 もはや完全に見えているようにすら感じられました。
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