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山田淳一郎さんのトクする税金の話

第109回 生前贈与のための新相続税制−中級編
新制度を受けた子供が払う相続税、贈与財産は物納できない

相続税は原則として
納期限までに現金で
一括納付しなければなりませんが、
現金での一括納付も
前回ご説明した延納もできない場合には、
税務署長の許可を得て、
相続した財産そのもので相続税を納めるという
「物納」が認められています。

しかし、新制度を適用して
贈与を受けた財産については
この物納制度を利用することはできません。

つまり、新制度を利用して
親から贈与された財産について
贈与者である親の相続の際に
追加で相続税を支払う必要があったとしても、
その贈与財産そのものを物納して
相続税の納付に充てることはできない、
ということです。
すなわち、新贈与に対して
相続時精算課税制度で発生する追加の相続税は
一括であっても分割であっても
とにかく現金で納税しなければなりません。

追加相続税がかかるケースにおいて、
相続で十分な現預金等を取得した場合や
子供自身の現預金等がある場合、
又は十分な収入があり
分割納付できる場合であれば問題ありませんが、
そうでない場合には
子供は納税に苦労することになります。

また、相続までに贈与財産の価額が下落したために
贈与財産を全て売却しても
まだ追加相続税には足りない場合には、
せっかく贈与した財産が
子供の手許に残らないことになってしまいます。

新制度を利用した場合には、
贈与を受けた子供は
贈与者(親)に相続が発生した時点で
相続税を精算しなければならず、
その結果、追加で相続税を
支払うことになる場合がありますが、
前回お話したとおり
延納の条件が相続に比べて不利になる場合があること、
また物納が認められないことなどから、
子供が追加相続税の納税に苦労する可能性があります。

したがって、贈与をした後も
経済情勢等を見ながら
子供が将来払う追加相続税の納税資金の手当て
(たとえば贈与を受けた子供に遺言で現預金を遺したり、
 その子供を受取人にして保険に加入するなど)について
検討しておくべきと思います。

(参考)物納の要件
1.相続税を納期限までに延納であっても
  現金で納付できない事情があること
2.申告期限までに物納申請書を提出すること
3.物納適格財産であること

執筆:税理士法人山田&パートナーズ 税理士 壽藤里絵
監修:公認会計士 山田淳一郎


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