第77回 生前贈与のための新相続税制
新制度は、
遺留分(相続できる権利)を侵害しないような贈与を
新制度は生前贈与が実行しやすい制度ですから、
税金をあまり心配することなく、
財産を贈与したい時に、
贈与したい人へ贈与することができます。
生前に贈与しておけば、
財産を渡したい人に確実に渡すことができ、
それを確認できる点もメリットといえます。
しかし、民法には「遺留分」という制度があり、
相続人(兄弟姉妹を除く)は、
相続財産の一定割合を必ず取得できる権利を持っています
(主張することができる権利。もちろん主張しなくてもよい)。
遺留分の割合は原則として
各相続人の法定相続分の2分の1です。
たとえば、財産額が1億円、相続人が長男、
長女の2人のケースでみていきましょう。
生前に長男に9,000万円を贈与し、
相続発生時の相続財産は1,000万円でした。
このような場合、残った1,000万円を長男、
長女が法定相続分(このケースでは2分の1ずつ)
どおり遺産分割するのでは、長女が不利になります。
そこで、民法では、
残った相続財産だけでなく
相続開始前の生前贈与財産も含めて、
「遺留分」の額を計算することにしています。
このケースにおいて遺留分の対象となる額は、
残った相続財産1,000万円と
長男に生前贈与した9,000万円の計1億円です。
また、長女は本来の法定相続分が2分の1であり、
遺留分の割合は法定相続分の2分の1ですから
4分の1となります。
つまり、長女には2,500万円
(1億円×1/4=2,500万円)取得したいと
主張する権利(遺留分)があるわけです。
しかし、残っている相続財産は1,000万円ですから、
このケースにおいては長女が遺留分を主張しますと
長男は既に生前贈与された9,000万円の中から
1,500万円を長女に支払わなければならないことになります
(裁判所の判断によるのが一般的です)。
この権利は長女が長男に
請求(遺留分減殺請求という)することにより認められますが、
請求する長女も請求される長男も
両者とも気まずい思いをすることになります。
したがって、生前贈与する時には
「遺留分」を侵害しないよう配慮することが大切です。
なお、民法上は「遺留分」の額を計算する場合には、
生前贈与財産は贈与時の価額ではなく、
相続時の価額で計算します。
執筆:(株)東京ファイナンシャルプランナーズ 税理士 五関幸子
監修:公認会計士 山田淳一郎
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