第61回 生前贈与のための新相続税制
新制度は「贈与額(累計)2,500万円まで贈与税ゼロ」
新制度を選択した場合に、
現行の相続税・贈与税課税制度と比較して
大きく異なる点の一つに
特別控除枠2,500万円が設けられたことがあります。
現行の贈与制度では、もらう側1人あたり
1年間に110万円(基礎控除額)までの贈与については
税金がかかりません。
それを超える部分については、累進税率
(基礎控除後の財産額により段階的に10%〜50%)で
課税されます。
一方、新制度の「相続時精算課税制度」を選択すると、
贈与する側1人あたり累計で
2,500万円までの贈与について税金がかかりません。
「贈与する側1人あたり累計で」というのは
例えば、この制度を使って父から子が
1,000万円贈与を受けても贈与税はゼロ、
翌年に更に1,000万円の贈与を受けても
累計で2,000万円なので
やはり贈与税はゼロ、ということです。
但し2,500万円を超えると
超えた額に対して一律20%で贈与税課税されます。
例えば上記の例で、
更にその翌年に1,000万円の贈与を受けると
累計で3,000万円になりますので、
非課税枠を超えた500万円に対して
20%の贈与税がかかります。
尚、このように例えば父からの贈与について
新制度を選択している場合であっても、
新制度の適用関係にない人、
即ち新制度の選択をした親以外からの贈与については
現行の贈与税制度により贈与税課税が行われます。
ところで更に父からの贈与について新制度を、
母の贈与についても新制度を、
という具合に選択することもできます。
新制度は一旦選択すると
その取り消しはできないこととされていますので、
例えば2,500万円の特別控除枠を使い切った後に
その適用を取り消し、
毎年110万円の基礎控除を用いて贈与税の計算を行う、
といったことはできません。
2,500万円の特別控除枠を使い切ってしまうと、
その後は贈与価額に一律20%で贈与税が課税され続けます
(但し、既に御存知のようにこの20%の贈与税は
相続の際の相続税において精算されます)。
なお、上述したように新制度は
父と母のそれぞれの贈与について選択できますので、
2,500万円の特別控除枠も
父と母のそれぞれについて適用があります。
また、養子は実父母以外に養父母からの贈与についても
新制度の選択ができますので、
贈与者4人の全てについて新制度を選択すると
合計で1億円(2,500万円×4名)の特別控除枠が使えます。
執筆:税理士法人 山田&パートナーズ税理士 山本武尊
監修:公認会計士 山田淳一郎
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