第29回
特定口座への組入れ、
むずかしいけれど損を蒙らない方法伝授します
平成15年末までは、「一般口座」から「特定口座」に
株式を移管することができます。
今回は、「一般口座で買付け、
ただちに保護預り制度を利用してずっと預けてある株式」を
「特定口座」に移管する際の、
その株式の「取得日」「取得価額」の決め方ルールをご説明します。
自然体ですと余分な税金を払うことになり損をすることもあります。
ルールの詳細と、損を蒙らない方法を紹介します。
1.「平成5年1月以降に買付け、ずっと預けてある上場株式等」
平成5年1月以降に上場株式等を買付けて
そのまま預けてある株式を特定口座に移管する際の取得価額は、
「実際の買付け価額」となります。
ここ10年以内にその証券会社で買付けた株式ですので、
実際の買付け価額は証券会社が把握しているので、
このようなルールになっています。
2.「平成4年12月末以前に買付けた後に
そのまま預けてある上場株式等」
平成4年12月末以前に上場株式等を買付けずっと預けてある株式、
つまり、購入後10年以上預けっぱなしの上場株式等です。
<原則>
証券会社の帳簿は10年間保存が義務付けられていますが、
このケースは10年以上前に買付けた株式であるため、
証券会社が帳簿を保存し帳簿に基づき
買付け価額を管理把握しているとは限りません。
そこで、一定の割切りルールとなっています。
具体的には、この株式を特定口座に移管する際には、
「実際の買付け価格にかかわらず、
『平成13年10月1日の終値の80%』をもって取得価額とする」
とするルールです。
ところで、この割切りルールですと
次のように個人投資家にとって
不利な状態が生じることもあります。
例えばバブル時平成元年に100万円で買ったA銘柄の
平成13年10月1日の終値が70万円のケースでは、
一般口座からそのまま特定口座にスライド移管しますと
移管する際の「取得価額」は、
「70万円×80%=56万円」とされてしまいます。
つまり、特定口座に移管した後に、
A銘柄を100万円で売却すると
「56万円で買ったA銘柄を100万円で売った、
だから利益が44万円生じた」として税金計算されますので、
余分な税金を払うことになり損ですから
下記対応を実行した方が有利になります。
<例外>
上記原則ルールですと、
バブル時に買付けた株式について不利になることもあることから、
例外規定が設けられています。
具体的には、
「証券会社が買付け時の帳簿を保管しており、
保存する帳簿にその『取得価額』
『取得日』の記載・記録がある場合には、
『平成13年10月1日の終値の80%相当額』
または『実際の買付け価額』いずれを
特定口座に受け入れる際に把握する
『取得価額』としてもよい」とされています。
この場合の課題は、証券会社が
昔の帳簿を保管していて対応できるかどうかです。
法律では10年間の帳簿保存が義務付けられていますが、
それ以前の帳簿を保存しているかどうか、
対応できるかどうかは証券会社ごとに異なりますので、
取引している証券会社に確認して下さい。
<こうすればよい―対応策>
上記バブル時に買付けたA銘柄のようなケースで、かつ、
その買付けた証券会社に買付け当時の帳簿が保管されていない、
対応できない、といった場合には、
一般口座からそのまま特定口座に移管すると
「平成13年10月1日の終値の80%」を取得価額として
特定口座に移管されることになり、
これでは不利になりますのでその場合の対応策を紹介します。
その方法は「一般口座」からその銘柄の株券を引き出して
一度タンス株券であった状態(あったこと)にしてから、
「特定口座」に組み入れる方法です。
株券を一旦一般口座から引き出し手元の株券にしますと
「タンス株券(顧客が自分で保管している株券)」に変わります。
つまり一般口座から直接に特定口座に移さない方法によれば、
一時(あるいは一瞬)タンス株券になります。
「タンス株券」は「取得日」と
「取得価額」が確認できる書類があれば、
実際の取得価額をもって特定口座に入れることができますし、
または、平成15年3月末までに名義書換している場合には、
その名義書換した日を「取得日」とみなして、
「名義書換した日の終値」を
「取得価額」とすることもできますので、
それを活用すればよいわけです。
こうしますと、「平成13年10月1日の終値の80%」ではなく、
実際の購入価額またはそれに近い価額
(名義書換した日を取得日とする場合)で
特定口座に入れることができます。
執筆:TFPコンサルティンググループ(株)税理士 布施麻記子
監修:公認会計士 山田淳一郎
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