| 第165回コバンザメ商法―やってみよう小さな美術館
 
           
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            | 源内焼南北アメリカ地図皿(江戸中期) |  多くの作品中でいささか忘れられているものに、
 彼が情熱を注いで作り上げた陶磁器『源内焼』がある。
 彼が幕府に具申した陶器工夫書が今も生家に伝わっている。
 それを読むと、彼の情熱がひしひしと伝わってくる。
 陶器工夫書の一説------------------------------------------------
 揖斐十太夫様御代官所肥後の国、天草郡深絵村産
 1、陶器の土 一包
 この土天下に並び無き上品に御座候。
 伊万里、唐津、平戸焼など皆この土を用いております。
 伊万里や唐津は日本国中に広くいきわたっている。
 平戸焼などは将軍に献上されており、
 その為この土は自由に売買できない。
 中略 ・・・・・・・
 伊万里や唐津の職人たちは
 古くからの覚えたことだけで新たに工夫をしていないので、
 焼物も自然と下品になっている。
 天草の土は中国や和蘭の焼物の土より抜群によいので、
 工夫さえすればよいものが作れる。
 日本人は外国のものを尊び、高価で買い求めている。
 もし日本の陶器が外国より良いとなれば皆、日本のものを用いる。
 そして外国の陶器に金銀を費やすことも無くなる。
 さらに幾らでもある我国の土をもって
 海外より金銀を得ることもできるので国の利益にもなる。
 明和8年辛卯5月  平賀源内(印)
 ------------------------------------------------ と概略述べている。閉ざされた社会の中でも源内は広い視野を持っていた。
 さて、十年ほど前は、
 こんなに価値のある源内焼の中皿が1枚10〜20万円で買えた。
 良い物と悪いものの区別がまだはっきりとせず、
 わくわくするような優品が
 思わぬ安値で入手できることもたびたびあった。
 買った作品を手にとっていつまでも眺めていたものだ。
 一年ほどで50点くらいの源内焼が手元に集まってきた。
 骨董の現場で
 よいものと悪いものの区別がはっきりと付かない時期は
 買い時といわれている。
 殆どの人がまだ手をつけてないからだ。
                       (続く・・・・)
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