第53回
商品学(タイ編)
1. はじめにーなぜか嫌われるアセアン一の成長株
昨今、バンコクの骨董店を訪ねる外国人は
こましなタイ陶磁の値段を聞けばきっと驚くことだろう。
非常に高いのだ。
かつてタイは僕の仕入れ地として30年近く、
隅から隅まで歩き回って値打ちモノを
日本に持ち帰ったものだ。
しかし、このごろ好調な経済に影響されてか
タイ人自身が自国の美術に目覚め、
ドンドン買っているのだ。
それに企業やコレクターが私設美術館を作ったりして、
以前僕が日本にもって帰ったものを、
「持ってきてくれ!」とさえ同業者が言うようになっている。
話はそれるが、
古美術品はその国に近いところほど
高価であるという原則がある。
我々日本人であれば日本美術が親しみやすい。
そんなわけで日本では日本美術が一番評価される。
ついで朝鮮、中国と来る。
その次に東南アジアかというとそうではなくて、
ヨーロッパや中近東になるようだ。
地理的ではなく、
文化の接近度が近い方が評価されやすいのだ。
それはどこの国でも同じようでタイにも当てはまる。
ただ、アメリカだけは違っており、
世界のどこの骨董品でもほぼ平等に評価して、
ブラックホールのように吸い込んでいる。
歴史の若い国であるということ、
世界の経済を牛耳っているということ、
どこの文化とも密接にかかわっているということが
影響しているのだろう。
今タイ美術はサザビーズやクリスティーズなどで
積極的に取り上げられており、
日本美術のオークション回数をしのぐほどとなっている。
言い換えれば世界のどことも緊密な関係を築き、
経済的文化的なつながりが
強くなりつつあるということである。
タイ国は東南アジアで突出した経済力を保持しており、
我国とも太い結びつきを持つようになっている。
その結果日本とのつながりや文化交流が盛んになり
昨今この地の美術品の理解が我国でも進みつつある。
旅行や駐在、タイ美術展など様々な形で交流が進み、
タイの美術品を持ち帰る人が増えている。
それをきっかけに
美術書や文化書などが出版されるようになった。
僕個人でもこれまでに
タイに関する書物を7冊も出している。
この方面の美術に手を染めた頃は
全く暗中模索の状態であったが、
今ではかなり詳しい情報が簡単に入手できる。
今そんなタイの美術は買いなのだ。
それを周辺国は『ジトッ』とした目で見つめている。
彼らの美術品もタイに続いていくことになるだろう。
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BC300〜AD200 バンチェン後期赤色磨製土器
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7〜6世紀 ダヴァラヴァティ三尊仏
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