誰が日本をダメにした?
フリージャーナリストの嶋中労さんの「オトナとはかくあるべし論」

第37回
ブランド品大好き

高級ブランド品に暗い私は、
エルメス製のバーキンやケリーのバッグが
どれほど価値あるものなのか、さっぱり見当がつかなかったが、
値段を聞いて思わずのけぞった。
新品なら優に100万を超えるものもあるという。
鼻紙やら白粉やらを入れるただの手提げかばんが100万円!
かたわらの女房に、
「お前さんも、あんな物がほしいのか?」
と聞いたら、見損なわないでよと鼻であしらわれたが、
重ねて聞くと、
「ほしい、ほしい、ほしいヨォ!」とやけくそ気味に叫んだ。

わが愛する貧乏詩人、
山之口貘の『鮪に鰯』という詩の中に、
マグロの刺身をいっぺん食べてみたい、
と人間みたいなことを呟いた女房に、
《死んでもよければ勝手に食えと
 ぼくは腹だちまぎれに言ったのだ》
というくだりがある。
貘さんの詩にあやかって私も
(死んでもよければ勝手に買え)
と心の中で叫んだのだ。

高級ブランド品が好きな女たちに、
なぜブランド品にこだわるのか尋ねれば、
「高品質で長持ち。
 一生モノだから、長い目で見れば賢い買い物なのよ」
と十中八九、したり顔でこう答えるに決まっている。
女は見栄っぱりだから、容易にしっぽをつかませない。

高級ブランド品の女王様と自称する中村うさぎ女史は、
その著『浪費バカ一代』の中で、
《ブランド物を、その品質の高さで選ぶ人間が、
 この世にどれほどいるのか》
と問うていた。
そして正直なうさぎ様はこう自信をもって断定したのだ。
《ブランド物の魅力とは、
 見栄が張れるという、この一点しかない》と。

高級ブランド品を身につければ、人間も高級そうに見える、
というのが大いなる錯覚であることは、
ションベン臭いネエちゃんや成金趣味のオバさんが、
質流れ品のバーゲンで
押し合いへし合いしながら買い漁っている様を見れば、
充分すぎるくらいわかる。
中身のないぶんだけうわべを飾り、
上流婦人になったような、たまゆらの陶酔感にひたるのだろう。
女の見栄は果てしがないが、
なに男だってブランド物のゴルフ道具を自慢し、
高級外車を乗り回したがるのだから、
どっちもどっち、バカに果てしはない。
男も女も互いに死ぬまで見栄を張り合い、
錯覚し合って生きていくのである。


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