第249回
経済との上手なつきあい方をガイドする『金銭処世学』
昭和57年5月の『WILL』の創刊号から
昭和59年新年号まで20回にわたって連載が完結し、
中央公論社から昭和59年に『金銭処世学』発刊されました。
出版にあたって邱さんは
いつもの「まえがき」でなく「あとがき」を書きました。
「戦後、復員してきて自分なりの仕事をはじめ、
事業に成功したり、企業の基礎を築きあげた人たちも、
ほぼ世代交替の時期にきた。
講演を頼まれる時、
『この業界も、社長がオヤジさんから
ムスコさんに替わる時期にきていますから、
後継者の育て方についてお話をしてください』とか、
『店主もだいたい、オヤジさんから
ムスコさんに変わりましたので、
若い人向きの話をしてください、
反応は早いと思いますよ』
とか説明づきの依頼を受けることが多くなった。
私自身は、終戦の年に大学を卒業しており、
終戦直後、すぐ事業をはじめた人々に比べると
10年くらいは年は若いが、
それでも今年は還暦を迎える年齢になった。
長男も29歳、次男も27歳になり、
それぞれ独立して仕事をするようになったから、
やはり息子たちの時代になったといえよう。
息子たちが社会人となって、
一人前にやっていけるかどうかは
これまで数々の浮き沈みを見てきたので、
せめて自分の子供たちに
つまらない失敗はやらせたくないと思う。
なかでも、お金の扱い方、経済の見方、
他人との金銭関係、財産に対する考え方などは、
これから『白紙に絵を描いて行く』ようなものであるから、
もう一つ指針になるようなものを
のこしてあげられればよいなあ、
とかねてから考えていた。
つまりこれから社会人としてやっていく息子たちに
『こういう具合に対処できたら、無駄をしたり、
廻り道をしないですむんじゃないか』
といった『金銭学』の本を書くことを思い立ったのである。
世の経済学の書物は大半が天下国家の立場に立った
いわゆるマクロの経済理論を展開している。
反対に、お金儲けの本は、
どうやったらお金をふやすことができるか
という点に話をしぼっているので、
お金と人間の幸せやお金と人間の関係といった面が
取り上げられていない。
ある時、私の著作の批判が雑誌の載っていて、
『この人は金銭学という分野を切り拓いた人だ』
という意味のことが書いてあったので、
目から鱗がおちる思いがして、
なるほどそういう切り口から入るべきだと方法論が定まった。
(略)私としてはうちの息子たちがこれを読んで、
経済の仕組みを理解し、資産運用に活用してくれたら、
経済生活の面ではかなりうまくやっていけるのではないかと
一応の目標を定めて執筆したつもりである。」
(『金銭処世学』あとがき)
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