第187回
『固定観念を脱する法』は強くなった日本を伝える作品も収録
「なぜ固定観念にとらわれてはいけないのか」
と題する一文の最後の部分です。
「その意味では、外国人が日本のことをどう考えているのか、
物差しを向こう側にあてて測定する必要があるが、
そうした人気にかかわらず、株式という形式の財源は、
長期化するスタッグフレーションの下で
次第に人気離散していく存在であるという見方を
変える気にならないのである。
株よりは、土地の方が、また日本の土地よりは
アメリカの西海岸のようなこれから日本企業が
大挙して進出するであろう地域の土地の方が、
投資の対象としては有望だろうというのが
私の見方なのである。
既存の発想によって運営されてきた経済が行き詰まって、
不況が世界的な拡がりを見せると、
経済的なリーダーシップが一国から他国へ移動し始める。
1930年代に、世界恐慌におちいったあと、
ケインズの理論を応用したニューディール政策が成功すると、
世界のリーダーシップはイギリスからアメリカに移った。
あれから半世紀たった昨今、
石油の値上がりがきっかけになって、
アメリカ的発想による生産体制が壁にぶつかり、
全世界が再び不況に見舞われた。
石油の値上がりによるコスト・インフレを
そのまま製品に上乗せして売ろうと思っても、
購買力がそれに伴わないから、滞貨の山になってしまう。
そういう中にあって、日本人は『省エネ』と『無人化』
という二つの新兵器をひっさげて
経済戦争の土俵におどり出てきた。
今や、どこの国に行っても、
日本製品に打ちまかされつつある連中が
『日本側が急増する輸出を抑えなければ、
貿易制限で報復するぞ』とおどしをかけてきている。
この駆け引きを見ている限りでは、
日本は50年前のアメリカの役割を
肩代わりしつつあるかに見える。
おそらく10年を出でずして、
世界経済における次のプライス・リーダーは
日本に移ると見てよいのではあるまいか」
(『固定観念を脱する法』まえがき)
『固定観念を脱する法』は日本が昭和55年頃から
世界に対して力強さを示すようになってきた
ことを伝える経済評論も収録しているのです。
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