Qさんの本を読むのが何よりスキ
という戸田敦也さんがQライブラリーのガイド役をつとめます

第164回
昭和54年、参議院全国区選挙への出馬を決意

日本にやってきて15年たったところで
邱さんは日本人に帰化し、そのあと
参議院全国区の選挙に出馬することを決めました。
「もともと私が作家になったのも、
戦後台湾の腐敗政治にあきたらず
『台湾の独立』を主張して香港に亡命したことが契機であった。
『密入国者の手記』『濁水渓』『香港』といった
私の初期の一連の作品はいずれも、
見方によっては、きわめて政治色の濃い作品である。

また私が47年に、それまで対立状態にあった国民政府と妥協して
24年にのぼる亡命生活にさよならを告げて台湾へ帰ったのも、
きわめて政治家的な行動と云ってよいだろう。
日本では、政治から完全にフリーな生き方が可能であるが、
政治や経済や文化や言論がまだ未分化の状態にある韓国や台湾や
中国大陸では残念ながら、政治の影響を受けないで、
物書きとして生きて行ける余地は非常に少ないのである。

それにしても、台湾の選挙にでも立つのなら話はわかるが、
私が突如、日本に帰化して
日本の全国区参議院に出馬する気になったのは
どうしてであろうか。
一口でいえば、私が台湾の将来を心配し、
中国大陸と台湾の間の平和的な解決に
何らかの方法で手が出せたら、と思ったからである。

むろん、中共と台湾の問題は、日本の政治の直接問題でもないし、
また日本の有権者たちの直接の関心事でもない。
だから、私は『二十一世紀をぜひアジアの世紀にしたい、
そのためには、日本人と中国人の関係がうまくいくことが大切』
『幸い私は通訳も要らないし、
双方の心情もよく理解しているので、
その橋渡し役を買って出たい』と主張したのである。」
(「落選もまた楽し」。『食べて儲けて考えて』に収録)


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2003年2月7日(金)

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