Qさんの本を読むのが何よりスキ
という戸田敦也さんがQライブラリーのガイド役をつとめます

第83回
株の処女作品「私の株式投資必勝法」が誕生しました

『週刊公論』に「株はおとなのお猿電車」を
書いてから半年くらいして邱さんは
『婦人公論』の昭和35年7月号から9月号まで
「私の株式投資必勝法」と題した株の話を
3回にわたって連載しました。
このタイトルは、『婦人公論』の編集長を兼ねていた
中央公論社社長の嶋中鵬二さんが決めたものです。
邱さんはこの連載で自分が株を買って体験し、
感得したことのすべてを書きました。

「婦人雑誌に、株式投資の手ほどきを載せるのも珍しかったが、
それを文士が書いているのだから、もっと珍しかった。
NHKがそれをよんで私に兜町に行かないかと誘った
『マイク片手に』という番組で、
私は放送局の人と一緒に取引所に乗り込み、
サイトリ(通常の証券会社間の媒介)をしている連中に
マイクをさしのべ『あなたは株で儲けていますか』ときいたら
『いや、株では儲かりませんが、買った土地が値上がりして、
だいぶ儲かりましたよ』と答えたのには
大笑いしてしまいました」(『私の金儲け自伝』)

これをきっかけに邱さんが週刊誌や月刊誌で
金銭とか株式投資などについて評論を書く機会が増えたのでしょう。
『婦人公論』誌に連載した「私の株式投資必勝法」に
「金がかたき」、「千円札の大流行」、「お金のことはわからない」
「貯蓄について」、「貯蓄者の心理」、「金儲け大学の校長先生」
「"男性株"投資法」、「欲望という名の特急」、「天気と景気」
といった一連の金銭や株についての評論を集め
昭和36年6月に朝日新聞社から
『投資家読本』と題した本を刊行しました。

時代がこうした作品を求めていたということでしょう、
この本は出版と同時にベストセラーになりました。
ふつう株のような変化の激しい分野をあつかった文章は、
時間がたつといろあせてしまうのですが、第一回の全集のとき、
「私の株式投資必勝法」、「金儲け大学の校長先生」
「"男性株"投資法」「天気と景気」の各作品と、このあと出版する
「もうかりまっか」を収録し、作品の名前をタイトルにした
『私の株式投資必勝法』が出版されました。
この『私の株式投資必勝法』は第三回目の全集である
邱永漢ベストシリーズの10巻として平成4年にも再版されています。


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2002年11月18日(月)

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