第81回
産業界の地図を塗り替える技術革新の新知識を仕入れよう
昭和30年代は技術革新の時代です。
株をやる以上は技術のことを勉強する必要があると
邱さんは感じました。
そこで「西遊記」を連載している中央公論社に出かけ、
『中央公論』誌の編集長に
「科学技術の万般について広い知識を持っている人を
知りませんか」と聞きました。
そうしたらデスクが吉村昌光さんという
科学技術コンサルタントを紹介しました。
吉村さんは戦争中の陸軍技術少佐で、軍から派遣されて
東北大や九大などで金属、電気、応用科学、機械、
最後は整形外科まで勉強したという博学な人で
松根油の抽出を発明した人です。
戦後は軍服を脱いで各企業の技術コンサルタントになり、
当時、日本経済新聞の月曜日に掲載されていた
『科学と技術』という欄の常連をつとめていました。
昭和34年の12月のはじめ、邱さんは
八百善という料理屋ではじめてこの吉村さんと顔を合わせ、
これからの技術革新について話を聞きました。
邱さんは吉村さんに
「『エネルギー革命というのがあると聞いているが、本当か』
『新素材としてどんなものがあり、
またどんな会社がそういう素材をあつかっているのか』
『自動車産業の将来をどう思うか』」
(『一家に一台火の車)と聞きました。
吉村さんから知らないことを教えてもらい、
邱さんは自分の持株の大部分を入れ替える気になり、
千代田化工建設とかオリジン電気の株とか
播磨造船株を買うようになりました。
しかし「科学技術が株の人気や業績に波及するまでには
相当の時間のズレがあり」「技術革新に焦点を当てた買い方は
科学的には面白くても、投資的には間違っている」
(「私の株式投資必勝法」)ことに気づくことにもなりました。
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