第1541
したたかさが必要な対中関係

このコラムは「中国ビジネスのススメ」ですので、
今まで外交や日中関係などの話は極力避けてきたのですが、
最近、本当に驚いたのは、
日本政府が尖閣諸島の国有化を検討している、
と発表したことです。

私は外交については全くのシロウトですが、
率直に感想を言わせて頂ければ、
一言、
「へたくそかっ!」
です。

せっかく石原都知事がヒール役(悪役)を買って出て、
政権交代を前に党内の権力抗争で
中国共産党内部が非常に不安定な状態になっている、
という絶妙のタイミングで都が尖閣諸島を購入すると発表し、
寄付金も10億円以上集まったにも関わらず、
ここでどうして横やりを入れる必要があるのでしょうか。

日本政府は丹羽大使を通じて中国政府に対して
「日本政府としては本当は中国と仲良くしたいんですよ。
しかし、極右の都知事が勝手なことをしてすいません。
でも、日本の法律ではこの取引に
国が介入することはできないんですよ」と言いながら、
実質的な実効支配を強めていけばいいじゃないですか。
それを「日中関係に重大な影響を及ぼす」と発言した
丹羽大使を日本に召還して説教とは幼稚すぎませんか。

民主党政権は石原都知事が
「国がやらないから都がやる!」と発言して、
国民から弱腰外交と罵られ、
次の選挙で負けることを怖れての発表だったのだと思われますが、
せめて、日本国内では
非公式でよいので関係者がお互いにきちんと話し合って、
筋書きを決めておきましょうよ。

尖閣諸島問題にしても、南沙・西沙諸島問題にしても、
中国政府は1970年代に振り上げた拳が
下ろせないまま政権が弱体化し、
国民からの圧力を抑えきれなくなっています。
中国共産党としては、国民の声を上回る強硬路線を貫くしか、
政権を維持する方法がないのです。

そうした中国の事情をわかった上で、
事を荒立てずにしたたかに実効支配を強めるのが、
日本政府がやるべきことなのではないかと思います。
北京に5年間留学していた高邑さんは、
山口県知事選挙に出るために
民主党の衆議院議員を辞職してしまいましたが、
民主党には他に中国の事情に詳しい議員がいないのでしょうか。

外務省や北京の日本大使館は、
この辺のことは十分にわかっていると思うのですが、
政治主導の政策のため、
彼らの声は日本政府には届かないのでしょうか。

中国が今の日本の立場だったら、
絶対に上記のようなしたたかな方法で実効支配を強めるはずです。
相手の事情を知り尽くし、相手のメンツも立てながら、
相手が一番嫌がる手を次々と繰り出していくしたたかさ。
外交の世界でもビジネスの世界でも、
今後、日本人が中国の人たちと伍していくためには、
こうしたしたたかさが必要なのではないかと思います。





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2012年8月20日(月)

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