第1429回
止まらない中国の大幅賃上げ
中国の大幅な賃上げが止まりません。
日本で言えば厚生労働省に当たる
中国人的資源・社会保障部の発表によれば、
今年1−9月に最低賃金の引き上げを行った
省・市は21に及び、
その平均賃上げ率は21.7%だった、とのことです。
各都市の賃上げ後の最低賃金月額は、
深セン 1,320元(1万5,840円)
杭州 1,310元(1万5,720円)
広州 1,300元(1万5,600円)
上海 1,280元(1万5,360円)
北京、ウルムチ、天津 1,160元(1万3,920円)
南京 1,140元(1万3,680円)
済南、福州、石家荘 1,100元(1万3.200円)
鄭州 1,080元(1万2,960円)
長沙 1,020元(1万2,240円)
合肥 1,010元(1万2,120円)
昆明 950元(1万1,400円)
武漢 900元(1万800円)
重慶 870元(1万440円)
とのことです。
こうして見るとやはり、
最低賃金は沿海部の大都市の方が高いですが、
内陸部のいわゆる二級都市と呼ばれる省都級の都市でも
かなり上がってきていることがわかります。
例えば、河南省から北京に出稼ぎに来て
最低賃金で働いている人が、
河南省の省都・鄭州でも
最低賃金の働き口を見つけたとすれば、
その差はたった月80元(960円)。
その程度の差ならば、
わざわざ遠く離れた北京まで出稼ぎに行くよりも、
生まれ故郷に近く親の面倒も見やすい鄭州で就職した方が良い、
と考える人がたくさん出てもおかしくありません。
私の最近の自慢は、当社の引越作業員40名が2年連続で、
春節の休暇で生まれ故郷に帰った後、
1人も欠けずに戻ってきてくれたことです。
一見、どうということもないように見えますが、
上記の話を聞けば、これがどんなにすごいことなのか
おわかり頂けるのではないでしょうか。
毎年、20%以上の賃上げが続く中国。
こんな状態が続けば、
今まで安くて豊富な人材を利用した人海戦術で、
「世界の工場」・中国の立役者として活躍してきた
低付加価値の製造業企業はひとたまりもありません。
100万人の労働者を抱える「世界の工場」の雄・富士康が、
現在、1万台しかないロボットを今後3年間という短期間で
100万台まで増やそうとしているのも、
毎年20%以上もコストが上がる労働者を
100万人も抱えていては、
どう考えても生き残っていけないからだと思われます。
中国政府も現在の第12次5カ年計画
(2011-2015年)の期間中に、
国内の労働者の賃金を2倍にすると公約しています。
中国政府はこうした荒療治で、
国内の産業構造を無理矢理高付加価値化しようとしています。
そして、国民所得を倍増させることによって、
経済成長のエンジンを従来の投資と輸出から消費に転換し、
中国を「世界の工場」から「世界の市場」に
脱皮させようとしているのです。
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