第1394回
転落人生と成り上がり人生の邂逅

張尚武、1984年生まれ、27歳。
2001年、ユニバーシアード北京大会の体操金メダリスト。
17歳で世界の頂点に立つも、
アキレス腱を切って選手生命を絶たれる。
その後、盗みを繰り返し、2007年より服役。

2011年4月に出所したものの、生活のあてがなく、
過去に獲得した金メダルは売り払い、
北京市の地下鉄駅構内で倒立など体操の技を披露して
1日40-50元(480-600円)を稼ぎ、糊口を凌ぐ。
この様子が「物乞いをする金メダリスト」として
ネット上で話題となり、
それを聞きつけた地元メディアが取材攻勢をかけ、
再び有名になる。

陳光標、1968年生まれ、43歳。
江蘇省の寒村で貧農の子として生まれるが、
以後、大変な苦労と挫折の末、
資源リサイクル会社を立ち上げて成功し、
一代で巨万の富を築く。

1998年からは築いた巨万の富を
困っている人に寄付する慈善事業を開始。
2008年の四川大地震、2010年の青海大地震、
そして2011年の日本の東日本大震災が発生したときには、
巨額の義捐金の寄付だけではなく、
自ら救援隊を率いて被災地に赴き救援活動を展開。
その他にも旱魃救済、貧困救済などの活動を行う。
現在までに寄付した金額は14億元(168億円)を超え、
中国一の慈善家と呼ばれる。

絵に描いたような転落人生と成り上がり人生ですが、
この正反対の人生を歩んできた2人が
あいまみえることとなりました。

「物乞いをする金メダリスト」のニュースを見た陳さんが、
自身が董事長を務める江蘇黄埔再生資源利用有限公司の
従業員に対するフィットネスインストラクターとして、
大卒初任給の約3倍に当たる月1万元(12万円)の高給で、
張さんを雇い入れることを決定したのです。

向かって左が陳光標氏、右が張尚武氏

上の写真は張さんの雇用契約締結式典の様子です。
これを機会に張さんの転落人生が
右肩上がりに変わることを願ってやみません。

今回のニュースを見て思ったのは、
今の中国では運とそれに対する態度や行動次第で、
人の人生は天国のようにもなるし、
地獄のようにもなる、ということです。

悪いことが起こっても腐らずに、
良いことが起こっても浮かれずに。
「人生万事塞翁が馬」、「一寸先は闇」。
こうした言葉を胸に刻んで、
人生を歩んでいかなければいけないな、
と思いました。


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2011年9月12日(月)

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