第1363回
売れ残る中国のマンション
北京市通州(とんぢょう)区。
北京市の東の郊外に位置するこの街は、
以前は「通県(とんしぇん)」と呼ばれ、
北京の市街地とは隔絶された田舎の街でした。
しかし、北京の経済の中心地・
CBD(Central Business District)まで
地下鉄で行けるということもあり、
今では北京のベッドタウンとして人気が急上昇中、
中国紙・21世紀経済報道によれば、
北京市通州区では2009年から2010年にかけての1年余りで、
マンションの価格が8,000元(10万円)/uから
2万5,000元(31万円)/uへと3倍以上に
跳ね上がったのだそうです。
私が北京で起業した10年前、CBDの新築マンションが
1万元(12.5万円)/uで売りに出されていると聞いて、
「べらぼーに高いな」と思った覚えがあるのですが、
今や「通県」でも2万5,000元/u。
時代は変わったものです。
一方で、北京不動産取引管理ネットのデータによれば、
ここ1年で通州区で供給されたマンションが
1万695戸であるのに対し、
販売されたマンションは3,090戸と成約率は30%以下、
マンションの売れ残りの在庫は2万戸を超えたのだそうです。
3倍以上に値上がりした通州のマンション価格を見た
不動産開発業者が一斉に開発を始め、
1年後に建設が完了したとたんに、
不動産投資家の買い控えに遭ってしまったのでしょう。
これは通州に限った話ではありません。
北京市全体のマンション在庫は
今年1月に10万戸を突破し、現在も増加中。
金融危機で不動産市況が低迷した2008年に記録した
史上最高水準である14万戸に近づいているのだそうです。
不動産開発業者は在庫が積みあがっているからと言って、
ここで値下げ販売してしまうと
採算が取れなくなってしまいますので、
今は何しろじっとガマンして
不動産投資家が帰ってくるのを待とうとしています。
しかし、このまま在庫がどんどん積みあがり、
中国政府の金融引き締め政策が更に厳しくなれば、
資金繰りのために値下げ販売に
踏み切らざるを得なくなるだろう、という見方もあります。
不動産投資家が不動産マーケットから去った今、
今度は中国政府と不動産開発業者の
チキンレース(度胸試し)が始まりましたが、
諸条件を勘案すると不動産開発業者の劣勢は明らか、
早晩、不動産開発業者が音を上げて
資金繰りのために赤字覚悟で値下げ販売を始めるか、
又は、資金繰りのつかなくなった
不動産開発業者がバタバタと倒産するのではないかと思います。
そして、多くの不動産開発業者が倒産した後、
チキンレースに勝利した中国政府は、
不良債権として銀行の手元に残った
大量のマンションをタダ同然で買い取り、
安価な経済適用房として
本当に住宅を必要としている低所得者を住まわせる、
という政策を打ち出すのではないか、
と私は予想しています。
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