第1350回
中国初のカプセルホテル、営業許可下りず
中国ビジネスの本当の魅力は、
経済成長と共に膨らみ続ける既存マーケットではなく、
その外側に果てしなく広がっている、
まだ誰も踏み入れたことがない新規マーケットにあります。
中国は日本を抜いて世界第2位の経済大国になったとは言え、
マーケットはいまだ成熟しておらず、
日本での生活と比べるとまだまだ不便なことがたくさんあります。
このため「日本にはあるけれども、中国にはないモノやサービス」
という観点で北京の街を見て歩けば、
1週間で100や200のビジネスアイデアを思いつくことは
難しいことではありません。
そう言った意味では、最近はインターネットの普及で
海外のビジネス情報が格段に入手しやすくなったとは言っても、
外国人や海外で便利なモノやサービスを見てきた
留学帰りの中国人は、新規のビジネスを始めるに当たって、
一般の中国の人たちと比べるとまだまだ
非常に有利な立場にあると言えます。
上海に住む塔賛(たーざん)さんもその一人でした。
塔賛さんは日本に留学していたときに
カプセルホテルでアルバイトをしていました。
その後、中国に帰ってきてから、
中国にもカプセルホテルの需要があるのではないかと考え、
今年1月、上海市に中国初のカプセルホテルをオープンしました。
中国では今、サービスを極力削ぎ落とす代わりに、
1泊200-300元(2,500-3,750円)と宿泊代金を非常に安く抑えた
ビジネスホテルが大流行しています。
如家(るーじゃー)や漢庭(はんてぃん)といった
大手チェーンに至ってはナスダックに上場するぐらいの
大きなビジネスに育っていますので、
ビジネスホテルよりも更に安い値段で宿泊できる
カプセルホテルを始めれば、ビジネスホテルと同じような
大きなビジネスになると塔賛さんは考えたのでしょう。
しかし、塔賛さんの前に立ちはだかったのは
上海市の消防局でした。
上海市消防局は塔賛さんのカプセルホテルを検査し、
可燃性のカプセルの材質や
狭い空間に人が密集することを問題視、
火事が起きたら危険と判断し、
営業を許可しない方針を固めました。
これに対し塔賛さんは「このホテルには既に
300万元(3,750万円)以上をつぎ込んだ。
開業は絶対にあきらめない」としています。
「消防局の許可が取れるかどうかなんて開業前、
というか一番最初のF/Sの段階で確認しときなさいよ」
と思われるかもしれませんが、
一般的に中国の役所では
そうしたことを事前に問い合わせても
答えてはくれません。
「何しろ作ってから申請しろ、そしたら検査してやる」
という感じです。
塔賛さんには消防局が納得するような防火対策をして
この難局を乗り切り、ぜひとも新規マーケットを切り開く
ニュービジネスを成功させて頂きたいと思います。
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