第1331回
中央の政策に反旗を翻す地方
インフレ退治と不動産価格抑制。
この2項目は、一般庶民の不満を和らげるために、
現在、中国政府が必死になって
取り組んでいる最重要課題ですが、
中央と地方の思惑の違いから、中国政府の政策が
なかなか効果を上げられない状況が続いているようです。
中国の中央銀行である
中国人民銀行の瀋陽支店長・王順氏は、
先日「地方当局が経済成長加速と投資拡大を目指す中で、
わが国の銀行融資抑制策は困難に直面している」
という懸念を示しました。
中国人民銀行は現在、インフレ退治のために
利上げ、預金準備率引き上げ、貸し出し抑制などの
金融引き締め政策を行っていますが、
その一方で、二ケタ成長を維持しようとしている地方当局は
投資拡大に躍起になっており、銀行から融資を受けたお金を、
新規のプロジェクトにどんどんつぎ込んでいるのだそうです。
王順氏によれば、瀋陽支店がある遼寧省は今年、
固定資産投資を20%も増やすことを目標としており、
そのための資金の大半を銀行融資で賄う計画である、
とのことです。
また、中国政府は不動産価格を抑制するため、
全国各都市に不動産価格抑制目標の設定を指示していますが、
これまでに抑制目標を公表した都市は
全国600以上の都市の中でわずかに40都市、
率にして6%強に止まっています。
更に、抑制目標を公表した都市も、抑制目標を現状維持
又は現状よりもマイナスに設定したところは、
中国政府のお膝元である北京市のみ。
他の都市は最も厳しい抑制目標を設定した
甘粛省蘭州市でも現状プラス9%であり、
それ以外の都市は軒並み10%前後のプラス、という、
とても「抑制」とは言い難い目標の設定となっています。
中央の政策に反旗を翻す地方。
同じ中国共産党の党内で
こうした矛盾が発生している大きな原因の一つは、
地方財政が破綻の危機に瀕していることにあります。
中国の税金には国が徴収する国税(ぐぉしゅえ)と
地方政府が徴収する地税(でぃーしゅえ)がありますが、
現在の税制では地税の割合が45%程度であるにも関わらず、
地方政府の財政負担の割合は75%にも上るそうです。
これにより、赤字の地方政府が続出、
全国の地方政府の負債総額は6兆元(75兆円)と、
年間地方財政収入の175%という巨額に達しているため、
多くの地方政府が財政破綻を防ぐために、
銀行融資を利用した積極的な投資によって税収を増やしたり、
高騰する不動産価格を利用した公用地売却によって
収入を得たりして赤字の穴埋めをしている、
ということであるようです。
中央が打ち出しているインフレ退治と不動産価格抑制は
非常に正しい政策です。
しかし、これらの政策を地方政府の協力を得て
推し進めていくためには、国税地税比率の見直し、
または、国税の地方政府への還付などの方法で、
地方政府の財政負担に見合った収入を確保させるところから
始める必要がありそうです。
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