第1312回
土地使用権の残り年数が少ない不動産の価値

中国政府の不動産価格抑制政策にも関わらず、
またじりじりと値段が上がってきている中国の不動産。
これだけ中国政府が脅しても、株式などには目もくれず、
不動産に投資し続ける中国の投資家を見ていると、
中国では不動産が投資対象として
投資家から絶大な信頼を置かれていることが良く分かります。

ただ、外国から来た私の目には、
この中国の投資家の不動産信仰は
非常に奇異なものとして映ります。
なぜなら、日本と違って中国の不動産には
土地の所有権は含まれておらず、
70年とか50年の長期の使用権を
買っているに過ぎないからです。

そして、その70年とか50年の使用権は、
デベロッパーが土地を取得した時点から起算されますので、
使用権70年の住宅用地の場合1年で1/70、
200万元(2,500万円)の土地であれば、
年間2万8,500元(35万6,000円)ずつ、
機械の減価償却のように
価値が下がっていってしかるべきなのですが、
実際は中国の土地の値段は、
どんどん上がっているのです。

中国政府がこの制度を作った時点では、
政府の役人も不動産を買う人も
「70年後には自分は生きていないだろうから、
使用権が70年もあれば十分だ」と考えたようで、
大して問題にもなりませんでした。
しかし、時が経つにつれて、
土地使用権の残り年数が少ない中古住宅や
デベロッパーが土地を取得してから
時間が経った物件などが増え、
今後、不動産取引において、
土地使用権の残り年数が問題となる案件が
増加することが予想されます。

先日も上海で土地使用権の残り年数が
32年しかない新築住宅が売りに出され、
物議を醸しました。

今回売りに出された「金橋碧雲公館」の土地は、
1993年にデベロッパーが「総合用地」として取得しましたので、
その時点では50年の使用権があったのですが、
開発が遅れ18年後の今年2011年に
ようやく売りに出されましたので、
新築であるにも関わらず、
土地使用権が32年しか残っていない、
という状態になってしまいました。

デベロッパーは土地使用権があと32年しか残っていないため、
定価の12%引きで販売したのですが、
値段の安さだけに引かれて買ってしまった人からは
「期限が切れた後はどうなるのか?」という
不安の声も出ているそうです。

中国の「物権法」では、
住宅用地の期限切れ後の対応について
「自動的に継続される」と定められているそうですが、
その後の継続期間や継続に必要な経費などの詳細は
明文化されておらず、購入者は不安を募らせているようです。

今後、中国で不動産を買う際には、立地や広さの他にも、
土地使用権の残り年数をしっかりと調べて、
残り年数に見合った値段で売られているのか、
冷静に判断をする必要がありそうです。





←前回記事へ

2011年3月4日(金)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ