第1305回
チャイニーズドリーム

「企業」と言えば
国営企業しかなかった社会主義国家・中国が、
改革開放政策で個人が民間企業を設立することを
許すようになって30年余り。
今では民間企業は企業数では99%、
国内総生産(GDP)でも5割超を占め、
雇用を創出するなど、中国経済において
極めて重要な役割を果たすようになりました。

中国では金融や通信などの重要産業では、
まだまだ国有企業の独占状態ですが、
逆に、家電やサービス業など生活密着型産業では、
民間企業の独擅場であり、
創業者が裸一貫から興した零細企業が
海外の有名企業を買収するような大企業に成長する
チャイニーズドリームがいくつも生まれています。

まずは米誌フォーブス中国版の2010年中国長者番付において、
資産総額80億ドル(6,500億円)で堂々の1位に輝いた
飲料大手・娃哈哈(わはは)集団の宗慶後会長。
同会長は1987年に浙江省杭州市で立ち上げた飲料工場を
短期間で中国最大、世界でも第5位の飲料メーカーに
育て上げました。

次に、同じ中国長者番付において、
資産総額57億ドル(4,700億円)で4位にランクインした、
中国最大の家電販売チェーン・
蘇寧(すーにん)電器の張近東会長。
同会長は1996年、江蘇省南京市でエアコンの販売店を創業。
その後、経済発展の波に乗って・蘇寧電器を大企業に発展させ、
2009年には日本の家電量販大手・ラオックスを買収しました。

また、自動車大手・浙江吉利(じーりー)集団も、
現在47歳の李書福会長が高校卒業後に設立した
個人経営の写真スタジオが出発点です。
同会長はその後、廃品回収、家電製造など業態を変え、
1986年に冷蔵庫の製造を開始、
1992年にバイクの製造を開始、
1997年には自動車の製造を開始。
2010年にはスウェーデンの高級車メーカー・ボルボを買収して、
世界中の注目を集めました。

そこまで行かなくても、今の中国には
もっと小さなチャイニーズドリームの話が
そこいらじゅうにゴロゴロと転がっており、
そういう話を日常的に聞いていると、
何だか自分にもできそうな気がしてきてしまいます。

かく言う私も、
丸紅の北京駐在員だったときの取引先担当者が
国有企業をあっさりと辞めて自分で貿易会社を始めたとたんに
瞬く間に金持ちになり、
乗っている車がベンツ→ポルシェ→ロールス・ロイスと
出世魚のように変わっていくのを目の当たりにして、
「彼にできるなら自分にもできるのではないか」という
大きな勘違いをしてしまったことも、
中国で起業するに至った1つの大きな理由でした。

もちろん、中国で起業すれば誰でも成功して
チャイニーズドリームを手にできる、
というわけではありません。
しかし、中国に住んで、
日常的にチャイニーズドリームの話を耳にして、
「もしかすると自分にもできるのではないか」という
根拠の無い自信を持つことも、
中国で起業をして成功を勝ち取るためには、
必要なことなのではないか、と私は思います。


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2011年2月16日(水)

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