第1187回
「インフレなき経済成長」を目指す中国
中国の経済が好調です。
中国の2010年1-3月の国内総生産(GDP)伸び率は、
前年同期比11.9%を記録しました。
この成長率は、景気の過熱が懸念された
2007年とほぼ同程度の水準であり、
中国経済は金融危機による
景気の後退局面から完全に脱却し、
中国政府は今後、利上げなどにより
逆に景気の過熱を抑える政策を
打ち出していくことになります。
中国経済は金融危機以降、
経済成長の主力エンジンだった輸出が低迷し、
2009年1-3月のGDP伸び率は6.2%まで落ち込みました。
しかし、その後、中国政府の巨額の財政出動、
金融緩和、消費促進策などによりGDPの伸び率は、
2009年4-6月が7.9%、
2009年7-9月が8.9%、
2009年10-12月が10.7%、
そして、2010年1-3月は11.9%と
ほんの1年ほどで急回復しました。
更に、落ち込んでいた輸出も2009年12月、
前年同期比でプラスに転じ、
2010年3月には金融危機以前の水準を回復しました。
一方で、消費者物価指数(CPI)は、
2009年11月に前年同月比+0.6%と
10ヶ月ぶりにプラスに転じた後は、
2009年12月 +1.9%、
2010年1月 +1.5%、
2010年2月 +2.7%、
2010年3月 +2.4%と
じわじわと上がってきています。
特に金融危機対策で
市中にあふれ出た過剰流動性は不動産に集中し、
一部の都市では不動産バブルが発生、
中国政府はそうしたバブルを抑え込むために
様々な政策を打ち出しています。
経済成長が100%賃金上昇に反映されると仮定すれば、
現在の中国の状況は
「給料が11.9%、物価が2.4%上がる」という状態ですから、
差し引き9.5ポイント分だけ
豊かになっていくことを感じられる社会、
ということができます。
しかし、このままインフレが進み、物価が上昇し、
豊かさを感じられない一般庶民が増えれば、
中国共産党政権に対する不満が
マグマのように国内に蓄積されていく可能性もあります。
このため、中国政府は
2010年のCPI上昇率の目標を3%以内と定め、
物価の上昇を何とか抑えたい意向ですが、
不動産以外でも、食品や国際商品価格の上昇圧力は強く、
一部アナリストの間では早くも
「2010年のCPI上昇率を
政府目標の3%以内に抑えることは難しい」
との見方が広がっています。
中国経済は「インフレなき経済成長」を
続けていくことができるのか。
中国政府の今後の経済運営に注目です。
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