第1174回
止まらない北京の不動産価格上昇
北京の不動産価格上昇が止まりません。
北京市統計局は先日、
北京の環状線「六環路」の外側の不動産価格が、
初めて1平方メートル当たり1万元(13万円)を
超えたことを明らかにしました。
北京の街には何本もの環状道路が走っており、
昔の北京の街と外側を分ける城壁を
取り壊して作られた「二環路」から外側に
「二環路」、「三環路」、「四環路」、「五環路」、「六環路」
と呼ばれています。
東京で言えば、それぞれ
「明治通り」、「山手通り」、「環七」、「環八」、「県央道」
というようなイメージです。
「六環路」と言えば、北京空港よりも更に外側、
もう少し行くと河北省に入ってしまうような
郊外を走っている環状道路です。
北京の街の中心地までは、
バスを乗り継いで1時間半から2時間。
日本がバブル経済絶頂のときに、
平均年収の5倍で買える住宅が、
今の「県央道」よりも更に外側、
山梨県の中央本線・上野原駅まで行ってしまったのを
髣髴とさせるようなバブリーな状態です。
そしてそんなに遠い郊外であるにも関わらず、
1平方メートル当たり1万元という価格は、
既に普通のサラリーマンにとっては、
手が届かない高嶺の花の金額です。
例えば、共働きで2人合わせて
月8000元(10万4,000円)の世帯収入がある
王さん(40歳)と張さん(35歳)の夫婦が、
「六環路」の外側に建築面積100平方メートル
(使用面積70平方メートル)の
2LDKのマンションを買ったとします。
購入代金100万元(1,300万円)を全額、
住宅ローンで賄おうとすると、
年率5.5%で月4600元(6万円)の金利を
支払っていかなくてはなりません。
夫婦は毎日往復3−4時間の長時間通勤に耐えながら、
残った月3400元(4万4,200円)で
小学校に通う10歳の一人娘と親子3人で、
つつましく暮らしていくのですが、
100万元のローン元本は全く減りません。
中国では王さん夫婦のような人たちを
「房奴(ふぁんぬー、家の奴隷)」と呼ぶのですが、
これでは正に、家を買ったばかりに
一生家のために奴隷として働くようなものです。
中国の人たちは日本人よりずっと持ち家志向が強いです。
これは、持ち家が「幸福」、「安心」、「豊かさ」の
象徴と見られているからです。
しかし、これだけ不動産価格が高くなってしまった中で、
盲目的に持ち家を買おうとすれば、
昨年、中国で大ヒットしたテレビドラマ、
「蝸居(うぉーじゅぃー、カタツムリの家)」のように
持ち家が「不幸」、「心配」、「貧しさ」を
もたらしてしまう可能性も無きにしも非ずなのです。
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