第1118回
就職超氷河期で増える大卒ワーキングプア

中国は現在、工業からサービス業へ、
必死になって国内の産業構造を変える努力をしています。
しかし、産業構造が変わる一足先に、
大学が大量に増えてしまったために、人材マーケットでは
肉体労働者が不足する一方、大卒者は大量に余る、
というアンバランスな状況が発生しています。

このため、中国の大卒初任給は
どんどん下がっているようです。

今年2009年の北京市の大卒初任給の平均は
前年比7.56%減の2655元(34,500円)だったそうですが、
黒龍江省など内陸部では
1000元(13,000円)程度まで落ちているようです。
当社の引越作業員も現場監督クラスになれば
1500元(19,500円)ぐらいはもらえますので、
黒龍江省で大学を卒業して
地元でホワイトカラーとして就職するよりも、
北京に出てきて当社でブルーカラーとして働いた方が
収入が高くなる、という逆転現象が起きています。

「肉体労働者が足りなくて、
大卒者が余っているのなら、
大卒者も肉体労働をすればいいじゃないか」
と思われるかもしれませんが、
現状、そうした流れは生まれていません。
彼らも「大卒=エリート」という図式が
崩れていることはわかっているのですが、
大卒者は子供の頃から、遊びも恋愛も犠牲にして
猛勉強を続けてやっと大学を出た、
という気持ちがありますので、
学歴が全く問われない肉体労働をするのは
やはり抵抗があるのでしょう。
当社にも今のところ、大卒者が
引越作業員として応募してくることはありません。

しかし、全国に200万人も
就職先が決まらない大卒者がいれば、
背に腹はかえられませんので、
生活していくために給料の低い仕事に
甘んじる人も出てきます。
北京市の最低賃金は現在800元(10,400円)ですが、
「大卒者は最低いくら」とは決まっていませんので、
今後、大卒初任給の相場は、
どんどん最低賃金に近づいていくのではないかと思います。

更に、当社の引越作業員は
3食賄い付きの社員寮に住んでいますので、
現金でもらう給料はほとんど全て可処分所得となりますが、
ホワイトカラーとして給料の低い会社に就職した場合、
賄い付きの社員寮がある会社は少ないですので、
住むところや食べるものは
少ない給料の範囲内で自分で解決しなければなりません。

今、中国では産業構造の変化が大卒者の増加に
追いつかないことによって発生した就職超氷河期で、
こうした大卒ワーキングプアの人たちが
どんどん増えているのです。


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2009年12月9日(水)

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