第1110回
消費主導の経済成長のためには

輸出の落ち込みを投資でカバーするような形で
8%成長を確保しようとしている中国経済ですが、
いつまでもこんなことを続けることはできません。
なぜなら、過剰な設備投資は、
マーケットの需要をはるかに上回る
過剰生産能力を生み出すからです。

先日、中国国家発展改革委員会など10の省庁は共同で、
過剰生産能力を抱える業界への投資や融資を
厳しく制限する方針を明らかにしました。
対象となったのは、1.鉄鋼、2.セメント、
3.板ガラス、4.石炭化学、5.風力発電設備、
6.太陽電池の原料となるポリシリコンの6業界です。

この6業界については、政府基準を満たさない
プロジェクトへの融資を控えるよう
銀行への指導を強化すると同時に、
政府の承認を得ない限り、
債券の起債や新規株式公開(IPO)などによって
設備投資資金を調達することを認めない、
という厳しい内容です。

1〜4の業界については、
昔からある、いかにも供給過剰が起こりそうな
成熟した業界ですので、うなづけるのですが、
5の風力発電と6の太陽電池は
これから大きな成長が期待されている
自然エネルギーの業界であるにも関わらず、
既に供給過剰に陥っているようです。
中国企業は畑違いであろうとも、
「儲かる!」と見れば猫も杓子も雪崩を打って
その業界に飛び込んできますので、
あっと言う間に供給過剰に陥ってしまうのでしょう。

今後、中国政府はいつまでも
投資頼みの経済成長に依存し続けることはできませんが、
かと言って、世界経済の現状を見ると
大きく落ち込んだ輸出がすぐに復活するとは考えにくいです。

となると、大本命である消費に
経済成長を引っ張ってもらわなければならないのですが、
減税措置で売上が好調な自動車業界など
一部の業界を除いては、
老後や医療に不安を持つ国民の財布の紐は固く、
おカネが手に入っても貯蓄に回されてしまうのが現状です。
また、そもそも財政出動や金融緩和で投資されたおカネが、
国民の所得増加に必ずしもつながっていない、
というのも問題です。

そんな状況の中で消費を引き上げるためには、
中長期的には社会保障を充実させて、
国民に安心しておカネを使ってもらえるような状況を
作り出すことが大切です。
しかし、短期的には貯蓄に回せないおカネ、つまり金券、
それも期限が過ぎるとタダの紙切れになってしまう
期限付きの金券を国民に配って、
盛大に消費をしてもらうのが良いのではないでしょうか。

来年の春節(ちゅんじえ、旧正月)前に、
金券を紅包(ほんばお、お年玉袋)に入れて、
「政府からのお年玉」として全国民に配れば、
中国共産党の人気も急上昇して
一石二鳥だと思うのですが...。


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2009年11月20日(金)

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