第1077回
中国語の上達曲線

中国に長く住んでいてイヤなのは、
中国の人たちと中国語で話しているときに、
ネイティブスピーカー並みの中国語力を要求されることです。
中には「13年も中国に住んでいたら、
もうちょっと中国語がうまくてもいいんじゃないですか」
とハッキリと言う人もいます。

私は13年前、
ほとんど中国語が話せない状態で北京に赴任しました。
本来ならば1-2年留学して
ある程度の中国語を話せるようになってから
働き始めるべきだったのですが、
当時は日本の各商社が
「今後、中国炭の輸入が増える」ということで、
一斉に北京に駐在員を出した時期でしたので、
留学をしている時間的な余裕はありませんでした。

しかし、それでも赴任1年後には日常会話は問題なし、
3年後には中国語で中国企業と商談ができるまでになりました。
この頃は中国の人たちと中国語で話していても
「柳田さんは中国に来てまだ1年なのに
中国語がお上手ですね」とか、
「3年でもうこんなに話せるんですか」などと
お褒めの言葉を頂いたものです。

しかし、その後、中国に住んでから
5年が経ち、7年が経ち、10年が経つと、
褒められることは全くなくなり、
逆に「中国にそんなに長く住んでいるのに、
どうして外国人みたいな中国語を話すんですか」
というようなことを言われる機会が増えてきました。

これはどうも語学の実際の上達曲線と、
その国の人が考える上達曲線に
乖離があるからであるように思います。

語学の実際の上達曲線は、
3年目ぐらいまで急激に上昇した後は
なだらかにしか上昇しなくなるのに対し、
その国の人が考える上達曲線は、
住んでいる年数に応じて比例的に
上昇していくものだと思われているような気がします。

私はかねてから、日本の外人タレントの日本語が、
どうして来日後何年経ってもうまくならないのか
不思議に思っていました。
もしかすると日本語がうまくなりすぎると
人気が落ちてしまうので、
わざとヘタな日本語を話しているのか、
とも思ったのですが、
中国に長く住んで自分がそう言われる立場になって、
外人タレントの気持ちが
ちょっとわかったような気がします。
外国人は大人になってから何十年住んでも、
その国の言葉をネイティブスピーカーと
同じように話せるようにはならないのです。

逆に言えば「その国の言葉で
問題なくコミュニケーションが取れる」というのが
語学習得の目的であるとすれば、
3年もその国に住めば十分達成できると思います。
日本でも中国語を勉強する人が増えていると聞きますが、
「なかなか上達しない」とお悩みの方は、
ちょっと思い切って3年ぐらい中国に住んでみる、
というのはいかがでしょうか。


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2009年9月4日(金)

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