第1063回
「中国は民主主義国家である」

現在の中国は中国共産党の一党独裁国家です。

しかし、中国共産党は「中国は民主主義国家である。
ただ、そのやり方が欧米式の民主主義とは違い、
中国の国情に合ったものになっているだけだ」
という主張をしています。

なぜそんな主張をするのかと言うと、
日本の市議会、町議会に当たる
市、県の人民代表大会の代表の選出が
有権者の直接選挙で行われるからです。

そして、省の人民代表は
市、県の人民代表大会によって選出され、
国会に当たる全国人民代表大会(全人代)の代表は
省の人民代表大会によって選出されるので、
民意は最終的に国政に反映されている、
という論理です。

更に、満18歳になれば
中国国民は誰でも有権者登録ができ、
10人以上の有権者が連名で
代表の候補者を推薦することもできます。
そして、出来レースを防ぐために、
代表の定員より多い候補者による選挙を行う、
いわゆる「差額選挙」が推奨されています。

こう聞くと、中国にも民意を国政に反映させる
システムが整っているように思えますが、
私の中国人の友人で人民代表選挙の
投票をしたことがある人はいません。
こんな制度を額面通り受け取って、
有権者登録をして共産党が意図しない候補に投票したり、
自ら人民代表の候補に立候補して
共産党の意図とは違う主張をしたりすれば、
楽しい人生が台無しになってしまうことを、
みなさん直感的に見抜いているのでしょう。

「制度は作るが、運用でコントロールする」
という中国共産党のいつものやり方です。

しかし、一党独裁も悪い面ばかりではありません。

一党独裁国家ならば、
今回の中国政府の金融危機対策のような
スピード感のある大胆な政策を打ち出すことができますし、
20年先、30年先まで見据えた国家のビジョンを策定し、
長期的な視野で計画的な国家運営をすることもできます。

逆に、もし中国が民主化して
9億人という圧倒的多数を占める
教育水準の低い農民1人1人に選挙権を与え、
彼らが「オレのポケットにカネを入れてくれる人に投票する」
という投票行動を取った場合、
中国の政治は迷走し、発展は遅れ、
結局、農民の意図とは逆に更に貧乏になっていってしまう、
という結末もあり得ます。

もちろん、一党独裁国家には腐敗という最大の欠点があります。
しかし、党中央紀律検査委員会の組織と権限を大幅に強化し、
「腐敗党員は絶対に摘発して全員死刑にする」ぐらいの厳しさで
党内を徹底的に浄化することができれば、
中国共産党は「今の中国の発展段階においては、
一党独裁が最も合理的な政治体制である」
と堂々と主張して良いのではないか、と私は思います。


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2009年8月3日(月)

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