第1048回
権力闘争は暗殺から汚職摘発へ
先日、北朝鮮の金正日労働党総書記の
後継者に内定したと伝えられる三男・正雲氏の側近が、
長男・正男氏の暗殺を計画したが、
中国当局によって阻止された、
という衝撃的なニュースが流れました。
正雲氏の側近はまず北朝鮮にいる正男氏に近い人物を排除し、
マカオに滞在中の正男氏の殺害を計画しました。
しかし、中国当局が事前にこの計画を察知し中止を警告、
要員をマカオに派遣して正男氏を避難させた、とのことです。
この計画は金正日総書記が
関知しないところで進められた、とされています。
この事件を聞いて私が思い出したのは、
中国の「林彪事件」です。
1971年、当時国家副主席だった林彪が、
毛沢東の暗殺を計画しましたが失敗、
亡命しようとソ連に向かいましたが
乗った飛行機が墜落して死亡した、という事件です。
この事件のそもそもの発端は、
毛沢東に野心を疑われた林彪が
身の危険を感じたことにあると言われています。
こうした「自らの権力の座を脅かす者は
何人であろうとも抹殺する」という社会主義恐怖政治的な、
今となっては非常に「古風」な権力闘争が
いまだに北朝鮮で生き長らえていたことは、
私にとっては大きな驚きでした。
40年近く前の中国では今の北朝鮮のように
「古風」な権力闘争が繰り広げられていたわけですが、
今の中国には権力闘争がないかと言えばそんなことは全くなく、
ただやり方が「暗殺」ではなく「汚職摘発」という
比較的「今風」のものになっているだけです。
今、中国では「共青団派」が
「広東閥」の徹底的な粛清に乗り出している、
と言われています。
「共青団派」とは胡錦涛国家主席や汪洋広東省党委書記など
共産主義青年団出身者のグループ。
この「共青団派」が、
深セン市の許宗衡元市長、
広東省人民政治協商会議の陳紹基元主席、
広東省人民代表大会常務委員会の黄麗満元主任、
広東省公安庁で長年勤務していた
公安部の鄭少東元次官補などの地元幹部、
いわゆる「広東閥」の人たちを次々と汚職の疑いで拘束、
取り調べを行っています。
広東省出身の富豪で、
香港上場の家電量販大手・国美電器の創業者、
黄光裕前会長が経済犯罪容疑で
北京市公安局の取り調べを受けているのも、
こうした一連の汚職事件に
絡んでいると言われています。
今回の権力闘争は40年前と違って
「暗殺」ではなく「汚職摘発」という形に変わっていますが、
権力闘争に負けた方が
「汚職摘発」という形で失脚させられるのは、
もはや中国の人たちの間では常識、
暗黙の了解となっています。
私は今まで「中国共産党も随分変わってきているなぁ」
というイメージを持っていましたが、
こうしたニュースを聞くと、
本質的には40年前と何ら変わってはいないのではないか、
と思えてきます。
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