第1040回
たかが点菜、されど点菜
私が丸紅の駐在員として北京に赴任して、
一番最初にぶち当たったのは、
言葉の壁よりも何よりも
点菜(でぃえんつぁい、料理の注文)の壁、
つまり中国料理のレストランに行っても
うまく注文ができないことでした。
日本から来たお客さんや中国企業の人たちの接待するのは、
駐在員の重要な仕事の1つです。
点菜は当然、私のような下っ端の役割なのですが、
中国の中国料理は日本と違って
コースやセットになっている場合が少なく、
アラカルトで一品一品注文していきますので、
ある程度の知識と技術が必要となるのです。
中国料理は大きく分けて、
前菜である涼菜(りゃんつぁい)、
メインディッシュの熱菜(るぁつぁい)、
最後の締めの主食(ちゅーしー)
の3部構成になっています。
涼菜は和え物などすぐに出てきて
メインディッシュが出てくるまでの間、
お客さんがお酒を飲みながらつまめるものですが、
野菜系、肉系などをバランス良く注文します。
そして、熱菜は
海鮮、牛肉、豚肉、鶏肉、野菜などをバランス良く、
且つ、炒める、焼く、蒸す、煮るなどの料理方法が
なるべく重ならないように注文します。
また、日本人の場合、辛いものが苦手な人が多いですので、
唐辛子が入った料理ばかりにならないように配慮します。
最後の主食は
チャーハン、焼きそば、ラーメンなどの炭水化物系で、
食事の最後にお腹の隙間を埋めるためのものです。
これはお客さんの食べっぷりを見ながら
後から注文してもOKなのですが、
注文のタイミングが遅れると、
熱菜をほとんど食べ終わっているのに主食待ち、という
間の抜けた気まずい雰囲気の宴会になってしまいますので、
注意が必要です。
これらの注文を人数とお客さんの好み、
更には予算も考えながら、
瞬時に判断してやっていくわけですから、
新米駐在員に最初からうまくやれと言っても無理な話です。
実際、私は点菜の失敗により、
場の雰囲気を盛り下げたことが何度もあります。
しかし、逆に料理の量、
出てくるタイミングがバッチリで、
なお且つ、お客さんが
「おいしい、おいしい」と言って食べてくれ、
宴会の雰囲気が非常に良いものになったときのうれしさは
何とも言えないものがあります。
中国料理の世界では
「たかが点菜、されど点菜」なのです。
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