第1030回
甲型H1N1流感

世界中で猛威を振るう新型インフルエンザ。
中国では「甲型H1N1流感
(じゃーしんあいちいーえぬいーりゅうがん)」と呼ばれ、
その関連情報は連日報道されています。

しかし、いろいろと誤解もあるらしく
「当面、豚肉は食べない」という人も多いようです。

先日も中国人の友人と話していたら
「しばらくは豚肉を食べない」と言うので、
豚インフルエンザは豚肉からは感染しないこと、
また、万一その豚が豚インフルエンザに感染していても、
71℃まで過熱すればウイルスは死滅してしまうことなどを
説明してあげました。

これに対して友人は
「そんなことは知ってるよ。
でも、誤解でも何でも「豚肉は危ない」って思う人が多ければ、
豚肉を食べる人が減って在庫が増えるだろう。
そうなれば、新鮮じゃない腐った豚肉を
食べさせられる可能性が高まるじゃないか。
オレはそれがイヤだから
しばらくは豚肉を食べないことにしたんだ」とのこと。

いやはや、そこまでは思い至りませんでした。
やはり、衛生関係の防衛意識は私たち日本人より、
普段から鍛えられている中国の人たちの方が
一枚も二枚も上手なんですなぁ。

こうした間接的な影響はあるものの、
中国国内では感染がごく一部に止まっていることもあり、
中国の人たちは今のところ、
日常生活において新型インフルエンザの影響を
あまり受けていないようです。
しかし、水際では中国政府が
これ以上の中国国内へのウイルスの侵入を防ぐべく、
国家の威信をかけてありとあらゆる手段を講じています。

その結果、あまりにも必死になりすぎて、
何の症状もないメキシコ人を拘束したり、
カナダ産の豚肉を輸入禁止にしたりして
感染が広がっている各国の批判を受けていますが、
中国政府にとっては外国の批判よりも
自国民の批判の方がずっと怖いですので、
こうした過剰な対応もやむなしかと思います。

特に、中国政府は2003年に
非典(ふぇいでぃえん、SARS)の蔓延を許した、
という前科があります。

今回、新型インフルエンザの
中国国内での感染の広がりを許さずに無事乗り切れば、
中国政府は大きく株を上げることになりますが、
非典の時のような蔓延を許せば、
その学習能力の欠如を理由に、
「中国共産党にこの国を任せて本当に大丈夫なのか?」
という声が国民の間から
大きく盛り上がってくる可能性もあります。

中国政府にとって今回の新型インフルエンザは、
国民の支持を得て共産党の一党独裁体制を維持していく上で、
絶対に失敗が許されない試練なのです。


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2009年5月18日(月)

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