第988回
建国60周年の軍事パレードが持つ意味

先日、2009年は中国にとって
北京オリンピックと上海万博の狭間で、
大きな国際的イベントもない
「一回休み」の年になるであろう、というお話をしました。
しかし、国内的には2009年は
1949年の建国から60年という大きな節目の年となります。

中国に住んでいて驚くのは、
中華人民共和国が建国から約60年も経ち、
国民のほとんどが生まれた時から
自分の祖国が中華人民共和国であるにも関わらず、
中国共産党がいまだに国民から
共産党の中国支配の正当性について疑念を持たれることを
極度に恐れていることです。

中国政府が昨年から
労働節(メーデー)という共産党的な祝日を削って、
清明節、端午節、中秋節という
中国古来の祝日を法定休日にしたのも、
国民の間に「中国=中華人民共和国」という図式を
定着させる意図があると言われています。

5000年の歴史を持つ中国の人たちにとっては、
60年などという期間は
瞬く間ほどの長さに過ぎないのかもしれません。

そうした意味もあってか、今年の10月1日、
60周年の国慶節(建国記念日)には、
1999年の50周年の時以来10年ぶりとなる
軍事パレードが行われるそうです。
今回の軍事パレードは、
強い中国を内外、特に国民に対して誇示し、
国民の中国共産党に対する求心力を回復するべく、
建国以来最大規模のものとなる見込みです。

しかし、その一方で景気の減速により
中国国内では農民工(のんみんごん、出稼ぎ労働者)が
大量にリストラされたり、
大学生の就職戦線が超氷河期になっています。
そんな中で軍事パレードに巨額のおカネをかけて
ド派手にやってしまうと、
「オレたちが明日の生活にも困っているのに、
そんなものに税金をたくさん使いやがって!」
と多くの国民の反感を買い、
逆効果になってしまうリスクもあります。

このため胡錦涛指導部は軍事パレードに関して
「人心を鼓舞する盛大なものとすると同時に、
倹約を心掛け、実質的効果を求める」
という費用対効果の考え方を重視し、
「民衆生活の改善が最大の贈り物」との立場で臨む、
という指示を党内に出しているようです。

昔と違って、国民の顔色を見ながら
政権を運営していかなければならない今の中国共産党は、
他人事ながら大変だなぁ、と思います。


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2009年2月9日(月)

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