第969回
民主主義でなくても豊かになれる「中国モデル」

先日、英領香港最後の総督であるパッテン氏が
イギリスの国営放送BBCのインタビューに応じ
「中国が西側にもたらす脅威は安い製品の輸出ではなく、
民主主義の破壊の拡散である」と語りました。

同氏によれば「中国は民主主義でなくても豊かになれる
という考え方を広めようとしている」と指摘。
しかし「同国の独裁的、反自由主義的な原始資本主義モデルは、
民主主義体制とは異なり
困難な時に働く体制維持の安全装置を欠くため、
結局はうまくいかない」との見方を示しました。

これは大変示唆に富んだ指摘であると思います。

今世界では民主主義は絶対善、
独裁主義は絶対悪として認識されています。
民主主義国家の総本山を自任するアメリカに至っては、
民主主義を世界に広める布教活動まで行っています。

しかし、それぞれの国には
それぞれの発展段階や事情があります。
どこの国でも民主主義が
最適な政治制度であるとは限りません。

中国に住んでいる人ならば誰でもそう感じると思いますが、
今、中国を民主主義国家にしたら、この国は大混乱に陥り、
多くの国民を不幸のどん底に突き落とすことになるのは
火を見るより明らかです。

日本では1989年の天安門事件については
民主化を求めてデモを行った学生たちに
同情的な見方が多いですが、
あの時点で彼らの要求通り中国が民主化していたとすれば、
その後これほどまでの経済発展を遂げ、
これだけ多くの国民が豊かに幸せになることは
なかったのではないでしょうか。

中国を民主化するならば、
国民の所得と教育程度がもっと上がって、
国民1人1人が目先の損得ではなく、
中国という国の将来を見据えた上で
投票行動を行えるようになるまで待つ必要があると
私は思います。

その他にも、民主主義国家・日本では未だに
景気刺激策の国会での審議が始まっていないのに対し、
独裁主義国家・中国では既に
第2弾の景気刺激策が検討されている、
という政策決定のスピードの速さや、
東京の環状八号線が用地買収の難航もあり
全線開通まで50年もかかったのに対し、
北京の四環路は用地買収の必要がないため
環状八号線よりも長いにも関わらず
3年足らずできれいな輪っかになった、
という個人の権利より公の利益が優先されるシステムなど、
これから経済発展しようとしている新興国にとって
独裁主義の利点はたくさんあります。

パッテン元総督はこうした「中国モデル」は
結局はうまくいかない、と言っていますが、
これから経済発展を遂げ、
国民を豊かにしていこうとしている多くの新興国の目には、
この「中国モデル」は
非常に魅力的に映っているのではないでしょうか。


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2008年12月29日(月)

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